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STAGE 1 旅の始まり
朝焼けが少年の家を照らす頃、少年は旅支度をした。「ロッピー、行くよ。」 少年が話しかけるとロッピーは肩の上に乗った。少年は少しの食料と、父親の剣を手に山を降り始めた。 少年は犯人についてずっと考えていた。 何者なんだろう?人里離れたこの家を見つけ出すなんて。第一、何故両親は殺されなきゃいけなかったんだろう?その理由が一番分からない。わざわざこんな山奥まで来て殺さなきゃいけなかった理由。そんなもの見つかる訳ない。あんな優しい両親が殺されなきゃいけない理由なんてない。 少年はまだ溢れ出す涙を拭った。ロッピーが慰めるように少年に寄り添った。 「ありがとう。」 声を震わせながら言う。もし自分1人しかいなかったら、きっともっと辛かった。ロッピーだけでも生きていてくれてよかった。温もりを感じるだけで気持ちが落ち着いた。 山を降りるまでには、もう泣かないようにしよう。 そう強く誓った。少年は感情を出さないように心に鍵をかけた。 山を降りる頃には、夕方になっていた。山の麓にある村に入る。 この村には幾度か父と訪れたことがあった。食料以外の必要なものはこの村で買っていたのだ。この村に降りてくるときはいつも宿に泊まって翌日帰る日程だった。 村の様子はいつもと変わらない。 「よぉ。坊主。今日は1人で来たのかい?」 いつも買い付けに行く店の主人が声をかけてくる。少年は頷いた。 「そうか。今日は何かいるのかい?」 「いや・・今日は買いに来たんじゃないよ。」 「そうなのかい?どうしたんだ、坊主。まさか家出?」 「まさか。」 少年は苦笑した。 「冗談だよ。」 「あ、そうだ。おじさん。」 「うん?」 「あのさ・・怪しい人・・見なかった?」 「怪しい人?」 少年の質問に店主は眉根を寄せた。 「何でそんなこと聞くんだい?」 「ちょっとね・・。」 「強盗でも入られたか?」 「まぁ・・そんなとこ・・。」 曖昧に返事する。 「そうかぁ。でもわしは見とらんなぁ。」 「そう。ありがとう。」 「いやいや。すまんなぁ。役に立たんで。そうだ、坊主。これ、持ってけ。」 そう言って店主は果物をくれた。 「ありがとう。」 「気を強く持てよ。わしでよけりゃいつでも相談乗るから。」 「ありがとう。」 「ご両親によろしくな。」 その言葉に胸が痛んだが、頷いて少年は店主と別れた。 その時ロッピーは少年の肩越しに店主を見た。一瞬だったが店主の顔が歪んだのが見えた。いつもの優しい顔ではなく、冷徹な顔つきになったのをロッピーは見逃さなかった。 少年は村を見て回ったが、変わった様子はなく、両親を殺した犯人の手がかりは全く見つからなかった。 少年はポケットを探った。家の中で見つけた石のような、何かの欠片のようなもの。 何となくかざしてみるが、特に変わったものでもない。 「何だろうね、これ。」 ロッピーも首を傾げている。 その時、騒がしいのに気づいた。少年はその現場に近づいた。 「出てけ!」 「お前なんかが居たら、この村がダメになる。」 村人が誰かに暴言を吐いてる。 「あの・・でも・・。」 か細い声が聞こえた。マントを被っていたのでよく分からなかったが、女の子だ。 「でもじゃない、とっとと出て行くんだ。」 「現にお前の師匠とやらは、居なくなってるじゃないか。」 少女が泣き出しそうなのに、少年は気づいた。 「おい。」 「あ?何だ、小僧。」 「お前もこいつの味方か?」 「味方とか敵じゃない。見っとも無いだろ?大人が寄ってたかって女の子虐めるなんて。」 「ぐっ。」 「大人げないことしてる暇あったら、仕事したらどうだ?それとも俺とやりあうか?」 少年は大きな剣をちらつかせた。村人たちは舌打ちしながら去って行った。 「大丈夫?」 少女に声をかける。 「ありがとう。」 少女は泣き出しそうな笑顔を見せた。 「あたしの家、この近所なんです。お礼もしたいから寄って行きませんか?」 「ピィー。」 ロッピーは少女の肩に飛び乗った。 「あ、こら。ロッピー。」 「かわいい。貴方の?」 少女の問いに頷いた。 「あたしはマリア。魔法使いの見習いなんです。」 「俺はルカ。あの山の上に住んでる。」 「そうなんですか。あたしの家はこっちです。」 少女はそう言ってルカを家まで案内した。 少女、マリアの家は歩いて3分ほどで着いた。 「どうぞ。」 部屋の中はさっぱりとしてた。物があまりないからだろう。 「1人で住んでるの?」 人の気配がしないので、何となく聞いてみた。 「今は1人なんです。少し前まで師匠が居たんですけど。」 ルカはさっきの村人の言葉を思い出した。 『現にお前の師匠とやらは、居なくなってるじゃないか。』 あれはどういう意味なんだろう? 「その・・師匠さんは?」 その質問にマリアは躊躇いがちに答えた。 「・・行方不明・・なんです。」 「行方不明?」 「はい。3日ぐらい前のことなんですけど、『出かけてくる』と言ったまま・・帰って来ないんです・・。」 3日前に行方不明・・。彼女の師匠が居なくなってから両親は殺されたってことか。 「何処に行くとか言ってなかったの?」 ルカの質問にマリアは頷いた。 「あ、でも・・。」 何かを思い出したのか、マリアは顔を上げた。 「師匠の部屋を掃除してたらこんなものが。」 そう言うとマリアはどこからか石のような欠片のような物を取り出した。ルカは驚愕した。 「これっ・・。」 「何か知ってるんですか?」 マリアの質問にルカはポケットからあの石を取り出した。 「これ・・同じ物・・?」 「いや・・少し形は違うみたいだ。」 ルカはマリアが持っている石を見比べながら言った。 「あの・・これがあるってことは・・誰か・・居なくなったんですか?」 マリアの質問にルカは首を振った。 「いや。居なくなったって言うか、殺されたんだ。俺の両親。」 「あ・・ごめんなさい。変なこと聞いて。」 「いいよ。でもこれ・・やっぱり犯人の手がかりになるのか?」 「あたしの師匠が居なくなったことと、ルカさんのご両親が殺されたこと、何か関係があるんじゃ・・?」 「多分な・・。」 ルカは唇を噛んだ。 「ルカさん、あたしも連れてってください。」 「え?」 突然の申し出に驚く。 「師匠を見つけたいんです・・。このまま、この村に居ても師匠は帰って来ない気がするんです。」 「それはいいけど・・。聞かせてくれないか?村人たちは何で君を追い出そうとしてるんだ?」 マリアは少し躊躇ったが口を開いた。 「魔法が・・嫌いなんです。この村の人たち。」 「魔法が・・嫌い?」 マリアの言っている意味がよく分からない。思わず聞き返した。 「師匠はとても強い力を持っている魔法使いなんです。その力の使い方によって人を癒すこともできれば、殺すこともできる・・村人たちは、知ってしまったんです。」 マリアはルカを真っ直ぐ見た。 「師匠が今まで多くの人間を殺めたことを。」 マリアの言葉にルカは背筋が凍った。 「でもそれは・・望んだことではなかった。だから師匠は身を隠すようにこの村に・・。」 「・・なるほど・・。でも君は何で魔法使いに?」 「あたし、孤児なんです。捨てられていたのを師匠が拾ってくれて、育ててくれたんです。」 「そうだったんだ。ごめん。変なこと聞いて。」 マリアは笑って首を横に振った。 「あ、すいません。お茶も出さずに。」 マリアはそう言いながら、お茶を入れてくれた。 「ありがとう。」 「ピィ。」 「あ、ロッピーにはミルクもらっていいかな?」 「もちろん。」 マリアはホットミルクをロッピーの為に作った。 「ピィー。」 「ありがとう、だって。」 「言葉分かるんですか?」 「何となくだよ。ずっと一緒に居るから何となく分かるんだ。」 「なるほど。いいですね。そんな関係。」 マリアはにっこりと笑った。 「俺、山奥で住んでるから、こいつしか友達居なかったんだ。」 「そうなんですか。でもモンスター・・ですよね?」 「うん。大人しいから人間襲ったりしないよ。」 ルカがそう言うと、マリアは少し安心したような顔をした。 お互いの身の上話をしていると、すっかり辺りは暗く、夜になってしまっていた。 「今日はココで泊まってください。明朝出発しましょう。」 と言うマリアの提案にルカは賛成した。 「ありがとう。お言葉に甘えることにするよ。」 そう言うとマリアはにっこりと笑ってくれた。 ルカは案内された部屋にあるベッドに横になった。 犯人に繋がるものをまだ何も掴んじゃいない。 でもマリアも持っていたあの石のような、何かの欠片のようなもの。あれが何か関係あるのだろうか? それと両親が殺されたこと、マリアの師匠が行方不明になったこと、何か関係があるのだろうか。 ルカは石を見つめながら、そんなことを考えていた。 「ピィー。」 「どした?ロッピー。」 「ピィ、ピィ。」 ロッピーは窓の外を見るように促していた。ルカは窓の外に目を向けた。 「あ・・・。」 ルカは声が出なかった。窓の外に広がる真っ赤な世界。村全体は火の海だった。 「ピィ!!ピィ!!」 逃げよう、とロッピーが言ってるのが何となく分かった。ルカは自分の荷物と剣を担いで、マリアの部屋へ直行した。 「マリア!大変だ。早く逃げよう!」 部屋のドアを叩いて言うが、返事がない。マリアに何かあったのだろうか?不安が過ぎる。ルカは体当たりで部屋のドアを開けた。マリアの部屋は既に火の手が隣の家から伝って来ていた。 「マリア!マリアーーーッ!!」 叫んでも返事はない。もう逃げたのだろうか?ルカはマリアを探しながら、外へ逃げた。 マリアを探しながら家の外に出たルカだったが、マリアを見つけられなかった。 「くそぉ。どこ行ったんだよ!」 ルカは火を避けながら叫んだ。 「マリアーーーー!!」 「は、はい。」 ルカの背後から声がした。 「マリア、無事か?」 駆け寄ると、マリアは笑って頷いた。 「何とか。」 「部屋に居なかったから、逃げたとは思ったけど。」 「部屋に入る前に火の手が見えて、とりあえず逃げたんですけど・・ルカさんたち大丈夫かと思って引き返しちゃって。」 「そっか。どっちにしても無事でよかった。」 ルカは溜息を吐いた。 「っと。安心してる場合じゃない。逃げよう。」 ルカはマリアの手を取って、村の外へ向かった。ロッピーはもちろんルカの肩の上に乗っていた。 しばらく走ると、村の外に出た。少し小高い丘に上る。 「・・・。」 ルカたちは絶句した。村全体が、火の海だった。 どうしてこんなことに・・? マリアが身震いをした。 「寒い?」 そう聞くと、マリアは首を横に振った。 「すごく・・強い・・魔法の力・・感じるんです・・。」 ルカには分からなかったが、魔法使い独特に感じるものがあるのだろう。ロッピーは慰めるようにマリアの肩に乗った。 「ありがとう。ロッピー。」 「魔法・・の力・・。」 ルカは呟くように言った。 「もしかして・・俺の両親殺した犯人と関係があるのかもしれないな・・。」 「・・・・。」 マリアは恐ろしくて言葉にできなかった。 『師匠が・・関係してるかもしれない・・。』 3人はただただ火の海になっている村を見つめることしかできなかった。 恐ろしい火は村全体を焼き尽くして鎮火した。 3人はただ呆然としていた。東の方角が明るくなり、村全体を照らし始めた。 「・・これは・・。」 すべてを焼き尽くした後だった。何も残っていない。 家も・・店も・・人も・・家畜も・・。総てが灰になっていた。 ルカたちはマリアの家があった場所に来た。 「家が・・。」 跡形もなくなっている家を見て、マリアは泣きそうだった。 「マリア・・。」 「仕方・・ないですよね・・。命が助かっただけマシですよね。」 言い聞かせるようにマリアは言った。ルカは言葉をかけられなかった。下手に何かを言うと傷つけてしまいそうだった。再びロッピーが慰めるようにマリアの肩に乗る。 「ありがとう。」 ルカは辺りを見回した。昨日火の海だったのが嘘のように静まり返っている。 「村の人たちは・・逃げたのかな?」 ふと疑問が過ぎった。 「そう言えば・・逃げてる時、誰にも会いませんでしたよね?」 マリアの言葉にルカは頷いた。誰にも会わなかった。それは何を意味するのか。逃げたのか、それとも・・。 「まさか・・。」 マリアは後者を考えていたようだ。 「全員・・やられた・・?」 ルカたちは生唾を飲み込んだ。そしてふと気になった。 「マリアとロッピー、そこに居て。」 そう言うとルカは走り出した。何処に行くのか、マリアたちは分からなかった。 ルカが目指したのは、いつも買い出しに来ていたあの店だった。 「やっぱり・・。」 想像していた通り、店も家も燃え尽きていた。ルカは、燃え尽きた店があった場所に立ち入った。焼け残っている柱や壁を避けながら、ルカは探した。 「あ・・。」 柱を退けるとそこに黒焦げになっている店主らしき姿があった。腕らしきものがあり、腕時計らしきものもある。時計の形は歪んでいたが、店主の物によく似ている。 「うっ。」 異臭がルカを襲う。ルカは鼻と口を押さえた。そして何となくその周辺を見ていると、ふと何かが光った。光った物を探し、ルカはそれを取り上げた。 「これは・・。」 それは両親やマリアの師匠が持っていた、あの欠片だった。ルカはそれをかざして見た。形は違っているが、似ている。やっぱり全て関係があるのだろうか? ルカは疑問を巡らしながら、マリアたちの元へ戻った。 戻ってきたルカはマリアたちにもあの欠片を見せた。 「これ・・。」 「俺の親父がよく買い出しに行ってた店、見に行ってたんだ。そしたらこれが・・。」 「・・そのお店の方は?」 「黒こげ・・。」 予想していた通りの言葉にマリアは何も言えなくなっていた。 「やっぱり何か関係があるんだよ。この事件。」 ルカの言葉にマリアは頷いた。 「でもどこに行けばいいのか・・?」 ルカは頭をかいた。 「あの・・魔法の力を感じてたんですけど・・。」 「あ、うん。」 昨晩のマリアの言葉を思い出した。 『すごく・・強い・・魔法の力・・感じるんです・・。』 「その・・鎮火してから・・力がすっと消えた・・というか、あっちの方に・・。」 マリアは力が消えたと言う方角を指差した。 「・・西?」 ルカが聞くと、マリアは頷いた。今ちょうど日の出の時刻で、日が出ている反対方向、つまり西だった。 「行こう、西へ。きっと何か手がかりがあるはずだ。」 ロッピーとマリアは頷いた。 そして一行は、西を目指して歩き始めた。 昨日火事で辛うじて逃げたマリアは何も持っていなかった。そう言えば、魔法使いって杖みたいなの持ってるハズだよな? 「杖ってもしかして焼けちゃった?」 何と無く気になったので聞いてみると、マリアはキョトンとしていた。何か変なこと聞いたか? 「あぁ、杖ってこれのことですね?」 そう言ってマリアは胸元にあるペンダントをルカに見せた。 「ペンダント?」 「えぇ。必要な時にしか出さないんです。人によって杖の姿は違ってて、大体はアクセサリーのようになってます。」 「へぇ。なるほどね。」 「昔は杖の形のまま持ってるのが多かったんですけど、それだと緊急時に対処できなかったりするので。」 「持ち運べるようにか。」 マリアは頷いた。 「魔法って便利だなぁ。」 ルカは持っている大きな剣を思わず見た。これが小さければ楽なのに…でも父の形見だから文句も言えない。 「剣が小さかったら・・って思いました?」 マリアは笑いながら言った。 「う゛。」 見透かされ、ルカは動揺した。マリアはくすくすっと笑った。 「でも残念ながら、それを小さくしちゃうと、本当に緊急時に元の姿に戻せるか分からないので。」 「だよなぁ。」 ちょっと残念そうに言ってしまう。するとマリアはやっぱり笑った。 「笑うなぁ!」 「ごめんなさい。」 笑いすぎて出た涙を拭いながらマリアは謝った。 「荷物、持ちます。」 マリアは手を差し伸べた。 「いや。いいよ。大して重くないし。」 「そうですか?」 「じゃあ、こいつ、肩に乗せといて。」 ルカはロッピーをマリアの肩に乗せた。 「次の町までどれくらいだろ?」 ふとルカが疑問を口にした。 「えっと・・。確か丸2日は歩かなくちゃいけませんね。」 マリアが答える。 「丸2日か。その間は野宿しかねぇな。寝られるようなとこ、探さないとな。」 「そうですね。」 もう既に一行が向かっている方に日は沈みかけている。1日中歩いているので、そろそろ適当なところを見つけなければ。この辺りは木が生い茂っており、もしかしたら野犬等がいるかもしれない。 「あ、ルカさん。あれ。」 マリアが指差す方を見ると、誰かが野宿した跡があった。 「きっと旅人がここで休んだりするんだろうな。よし、今日はここで野宿しよう。」 「はい。」 ルカは荷物を降ろした。 「マリア、ここに居て。薪集めてくる。」 「はい。」 ルカはマリアを残し、薪を集めに出かけた。 「あ、ロッピー。」 ロッピーもマリアを残し、何処かへ行ってしまった。マリアは辺りを見回した。日が沈んでくると、薄気味悪い。 『でもココ動いちゃいけないし・・。』 マリアは怖さと戦った。覚悟していたはずなのに。ルカたちについて来る時、覚悟を決めた。 「どんなに怖くても、逃げちゃダメ。」 マリアは自分に言い聞かせるように言った。 ざわっと木の葉が揺れた。思わずびくっとする。マリアは目を閉じ、集中した。気配を読み、振り返る。 「ロッピー。何処行ってたの?」 戻ってきたロッピーは木の実を持っていた。 「これを取りに?」 「ピィ。」 そうだ、と言うように返事する。するとルカも薪を持って戻ってきた。 「おぉ、ロッピー。食料持ってきてくれたのか。」 「ピィ。」 ルカはロッピーの頭を撫でた。ロッピーは嬉しそうな顔をした。 「さてと、火起こさないとな。」 「あ、任せてください。」 マリアは数本置いてある薪の上に手を置いた。ポォっとゆっくりと赤くなる。マリアは段々手を離した。すると、薪には火が点いていた。 「すげー。魔法ってこんなこともできるんだ。」 「えぇ。魔法は使い方によって、役立ちもすれば武器にもなるんです。」 「そっかぁ。助かったよ。ありがとう。」 「いえ。」 お礼を言われ照れる。そして3人はロッピーが何処からか持ってきた木の実を食べて、空腹を満たした。 ルカは火の前で膝を抱えていた。マリアとロッピーは既に寝入っている。薪を適度にくべつつ、いろいろと考え事をしていた。それはほとんどこれからのことだった。 両親を殺した犯人を見つけること。 マリアの師匠を探し出すこと。 手がかりはこの石のような何かの欠片のようなもの。 両親が持っていたものとマリアの師匠が持っていたもの、そしてあの店主が持っていたもの。全て形は違っているが、同じ物だ。これが何なのかもよく分からない。 店主は何かを知っていたのだろうか?それすらもう聞けないが。 どうすればいい?どうしたらいい? マリアは村を焼き尽くした力は西へ抜けたと言っていた。だから西へ向かっているようなものだ。西に何があると言うのだろう?何もなかったら?マリアのことを疑うわけじゃない。でもただ闇雲に動いても無駄かもしれない。 ルカは頭を横に振った。 こんな消極的な考え方をしてちゃダメだ。ルカはふとマリアの寝顔を見た。安心して寝入っている。ロッピーもマリアを気に入ったのか、添い寝をしている。 ルカは旅の疲れからか、いつの間にか寝入ってしまった。 ルカは辺りが明るくなってきている事に気づいた。 「あ・・寝てた・・。」 見張りをしてるつもりだったのに。ふと横を見るとマリアとロッピーはまだ寝ている。何もなかったようだ。 ホッとしつつ、ルカは立ち上がった。 それに気づいたのか、マリアも目が覚めた。 「あ。おはようございます。」 「おはよ。寝られた?」 「はい。ぐっすり寝ちゃいました。」 マリアは起き上がって隣に寝ていたロッピーを抱き上げた。気づいたロッピーも目が覚める。 「おはよ。ロッピー。」 マリアが声をかけると、「ピィ。」と返事した。 その間にルカは燻っていた火に近くを流れていた川から汲んできた水をかけ、火を消した。 「近くの川で顔でも洗うか。」 3人は荷物を持って川へと移動した。 「この川、西から流れて来てるんですね。」 気づいたマリアが言った。 「だな。」 ルカは返事しながら、川の水に手を入れようとした。 「ダメ!」 突然マリアが怒鳴る。 「え?」 びっくりして振り返ると、マリアは我に返った。 「あ、ごめんなさい。大きな声出して。」 「いや。それはいんだけどさ。この水、ダメなの?」 ルカが冷静に聞く。 「微弱ですけど魔法の力が混じってて・・。危険かどうかは分かんないですけど・・。」 「なるほど。」 ルカはまた立ち上がった。 「まいっか。あと1日歩けば町に着くだろうし。」 「ですね。」 「行こうっか。」 「はい。」 「ピィ。」 再び一行は西に向かって歩き出した。 |