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エピローグ
 翌朝。何だか妙な視線を感じ、ほたるは目を開けた。
「! 何でお前がここにいるんだよ!」
 ほたるはガバッと体を起こした。目の前には、天音が座っている。
「え? 昨日『また明日』って言ったじゃん?」
 そう言えば・・・・・・。言葉の文だと思っていたほたるは、頭を抱えた。うん、こういうヤツだった。
「と言うか、朝から何の用だ?」
 ほたるはベッドから出た。
「何って、サングラスかけてない顔を見に」
 語尾にハートマークがつきそうな台詞に、ほたるは全身に鳥肌が立った。
「何のために?!」
「だって。サングラスかけてない方が、水瀬くんイケメンだもん」
 その瞬間、ほたるの顔がボンッと赤くなる。
「あー。照れてるー。かわいー」
 天音にからかわれ、ほたるは天音を振り切るように部屋の外に出た。
「あげはっ! 誰がコイツを家に上げていいって言った?!」
 慌てて一階に下りて、朝食の用意をしていたあげはに怒鳴る。明らかに八つ当たりである。ダイニングでは、たてはが既に着席していた。
「え? お兄ちゃんと約束してたんじゃなかったの?」
「約束?」
 あげはがきょとんと返した言葉に引っかかる。
「約束したじゃん? 『また明日』って」
 いつの間にか隣にいた天音が腕を絡めてくる。ほたるはブンブンと手を振って、天音の腕を解いた。
「それは約束とは言わない」
「えー。いいじゃん。せっかく来たんだし。デートでもしよ?」
 天音を突き放しても、負けじと追いかけてくるのは性格なのだろうか?
「俺はバイトだ」
 あまりにも冷たくそう言い放ったので、あげはが呆れる。
「もう。お兄ちゃんたら。そんなんじゃ、愛想尽かされちゃうよ?」
「尽いてくれて結構」
 ほたるはフンッと天音から顔を背けた。昨日の天音とは人格が違う気がするのは気のせいだろうか?
「水瀬くんの泣き顔。かわいかったのになぁ」
 唐突すぎる天音の台詞に、ほたるは天音を睨んだ。その言葉に食いついたのは、あげはとたてはだった。
「「え? お兄ちゃん泣いたの?」」
 ステレオで天音に聞くと、天音は嫌な笑いを浮かべた。
「フフフ。知りたい?」
「「知りたい!」」
 あげはとたてはが挙手をした。
「バッ、やめろ!」
 ほたるが止めに入ろうとするが、全員完全無視である。
「実はねぇ・・・・・・」
 天音が楽しそうに口を開いた。ほたるは珍しくプッツンと何かがキレた。
「やめんかぁぁぁぁああ!」

 水瀬家で追いかけっこが始まったのは言う間でもない。