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ACT.5 【LUCKY STRIKE】
奈月は家に戻ってからシャワーを浴び、動きやすいTシャツとジーンズに着替え、家事と宿題を済ませた。

そして約束の四時。開演時間にはまだ早い時間が、メンバーを紹介してもらうため、早めにライブ会場へ向かった。奈月が集合場所に着くと、他の三人は既に来ていた。
「ごめんな。遅くなって。」
「しょーがないよ。奈月ん家、皆より遠いもん。」
秀一が笑顔でフォローしてくれた。全員が来たことを確認すると、武人が先陣を切った。
「よし、じゃあ行こうか。」
三人は先に歩き始めた武人について歩いた。

ライブ会場はそんなに大きくなかった。武人が携帯でワンコールをすると、メンバーらしき一人が入口まで迎えに来た。
「いらっしゃい。」
出迎えてくれた彼は笑顔で迎え入れてくれた。武人よりは背は低いが(というか武人の背が高すぎるのだが)、整った顔をしていた。皆を誘導して会場に入らせる。
「結構こじんまりしてんだ。」
武人がライブ会場を見渡しながら言うと、彼は苦笑した。
「ははっ。そりゃあね。ここでライブすんのにも結構金要るもん。」
「だよなぁ。」
武人が頷く。
「そうだよ。だから今回は五組で借りてやってるけどね。」
「順番は?」
「トリ。」
短く彼が答えると、「すごいじゃん。」と武人が彼の背中をバシバシ叩いた。
「いってーよ。バカ。」
力の加減をしない武人に悪態をつく。
そんな会話を後ろで聞きながら、奈月は胸を躍らせていた。兄のライブを見にライブハウスへは何度も来たことがある。しかし兄のバンド以外で見に来るのは初めてなので、幾分の緊張もあるが、それでも楽しみで仕方なかった。
「ここだよ。・・みんな、武たち来たよ。」
彼が案内した先は楽屋らしき場所だった。中に居たのは四人のメンバーだった。
「おー。武ぇ。久しぶりぃ。」
メンバーの一人が手を上げると、武人は笑顔で返事した。
「久しぶりぃ。」
武人は久しぶりに再会した友達と会話を弾ませている。奈月たちは置いてきぼりを食ったような気分になった、その時武人と話していた友人がこちらに気づく。
「なぁ、そっちの子たちは?」
ようやく会話が奈月たちに変わった。
「あ、そうだった。紹介遅くなったね。里佳っちのことは知ってるんだっけ?」
武人が聞くとメンバーは頷いた。どうやら前にも来たことがあるらしい。武人は秀一と奈月を紹介することにした。
「えーっと、そしたらこの二人紹介するね。俺と同じ学校の英文科の天野秀一くんと黒川奈月ちゃん。」
「「初めまして。」」
秀一と奈月は同時に挨拶をした。案内してくれた子がニヤニヤと笑った。
「この子かぁ。武人が好きな子。」
「え?」
「だっ・・・てめぇ!」
武人が掴みかかるが、彼はそれを避けて、奈月たちの目の前にやって来た。
「初めまして。俺は武人の友達で志摩智広。ベースやってます。よろしく。」
手を差し出された奈月は笑顔で握手した。
「こちらこそ。よろしくお願いします。」
「あはは。かしこまらないでよ。俺たち、同い年なんだから。」
智広は笑った。秀一とも握手をした。
「俺は紺野淳史。ギター弾いてます!よろしく!」
元気良く挨拶をする敦史は、明るい性格のようで、武人と良く似ている雰囲気だった。
「神谷は久しぶり。」
「久しぶり。」
智広に声を掛けられ、里佳は返事した。中学の卒業以来だ。
「なんだ。知り合いか?」
椅子に座ってリズムを取っていた男が話し掛ける。
「そお。中学ん時の同級生。」
「そっか。武と同じ学校だったもんな。あ、俺は諏訪幸介。よろしく。」
幸介はにっこりと笑った。奈月は「こちらこそ」と笑顔で返した。
「俺は樋口誠人。ヴォーカルです。智たちより二個上ね。幸介とその横の圭吾も。あ、こいつ川原圭吾。目つき悪いしクールに見えるけど、何にも考えてないから。」
「何も考えてないのはお前だろ?」
肩を組まれながら紹介された圭吾は、誠人を睨んだ。
「圭ちゃーん。怖いよぉ。」
睨まれた誠人は泣きそうになる。
「言ってろ。」
圭吾はそっぽを向いた。馬鹿は相手にしない主義のようだ。二人はいつもこんな調子のようだ。泣きそうになっていた誠人はすぐにケロッとしていた。
「あれ?その手に持ってるのは?」
誠人が奈月の手に持っているものを目ざとく見つける。
「あ、これ。差し入れ。」
奈月は持っていたものを誠人に差し出した。
「わーい。」
誠人は受け取ると、嬉しそうに開け始める。中に入っていたのは、クッキーだった。午後の時間が余っていたので、焼いたのだ。
「おぉ。うまそぉー。」
「誠人。よだれ・・。」
幸介が自分の口元を指差す。
「いけね。」
誠人は自分の手の甲で口元を拭った。匂いに釣られ、他のメンバーも近づいてくる。
「何?お、うまそー。」
「ほんとだぁ。」
「差し入れなんて久しぶりだな。」
焼きたてのクッキーの匂いが楽屋に充満していく。
「何がええか、よう分からんくって。あんまり甘くないんにしたんやけど・・。」
「何だっていいの。こいつら何でも食べるから。てか差し入れなんてよかったのに。」
奈月の言葉に武人が答える。武人は自分も食べたそうに、奈月の手作りクッキーを見つめた。
「食おうぜ。食おうぜ。」
誠人は箱から小分けされたクッキーの袋を一つ取り出した。自分の分を確保すると、他のメンバーに箱を回した。メンバーもクッキーの袋を取ると、今度は武人たちにようやく回ってくる。武人は嬉しそうに取り、里佳と秀一にも渡した。
「うまい!これ、めちゃくちゃうまい!」
早速一口食べた誠人が叫ぶ。
「よかった。」
奈月はホッと胸を撫で下ろした。誠人はむしゃむしゃとクッキーを頬張った。他のメンバーも口々に「おいしい。」「うまい!」と絶賛してくれた。
「〜〜〜うまい!」
武人が叫ぶ。武人は誠人とは反対にせっかくの奈月の手作りを大切に食べていた。
「良かった。」
やはり「おいしい。」と言って食べてくれることほど、嬉しいことはない。
「それにしてもいつの間に作ったんだ?」
秀一が食べながら尋ねる。
「さっき。時間余っとったから。」
「なるほど。」
確かにクッキーくらい焼ける時間はあったと納得する。
「いやー、マジで上手い。お店に売ってるみたい。」
メンバーたちは美味しすぎるクッキーに感動した。
「そういや、奈月ちゃんって関西弁だよね?」
気になっていたらしい幸介が尋ねると、奈月は頷いた。
「うん。大阪から上京して来たんよ。」
奈月は短く説明した。メンバーもそれで納得したらしく、詳しくは聞いてこなかった。
奈月が辺りを見回していると、ギターが視界に入った。エレキギターだが、このモデルは新しい気がする。
「あれ?このギターって結構新機種ちゃう?」
「ああ。分かるのか?」
どうやらギターは圭吾の物らしい。奈月の意外な反応に、圭吾が興味を示した。奈月は質問に笑顔で頷いた。
「うん。ギター好きやもん。」
「へぇ。そうなんだ。」
奈月の言葉に圭吾の顔が和らぐ。
「おお。圭吾が笑ってる。」
圭吾の笑顔を初めて見た武人が驚く。
「滅多に笑わない圭吾が・・。」
「笑ってるよ・・。」
メンバーが驚きを口にするが、圭吾たちにはその会話は全く聞こえていないようだ。
「弾いてみるか?」
「ええの?」
頷きながら圭吾は奈月にギターを渡した。奈月は嬉しそうに受け取ると、早速ギターのストラップを肩にかけた。
「そのギター重くない?」
同じギタリストが淳史が会話に入ってくる。
「そう?こんなもんちゃう?」
奈月が何でもないように答える。華奢な身体で、重いギターを何でもないように抱える姿を見て、淳史はあまり良い気分がしなかった。
「ってか、弾けんの?」
思わず意地悪く聞く。
「ちょっとだけやけど。」
奈月は圭吾にピックを借り、少しだけギターを鳴らす。エレキギターは心地良く響いた。一応アンプに繋いでいるが、楽屋なので音は小さめだった。
「何か弾いてみてよ。」
智広に言われ、奈月は眉をしかめた。
「何かって言われてもねぇ・・。」
「あれは?えっと・・ベンチャーズ!」
誠人が提案する。奈月はそれに気づき曲名を言った。
「パイプライン?」
「そう!それ!」
「おっけ。」
誠人のリクエストに応えて、奈月は中学時代練習した曲を弾き始めた。難しい部分も奈月は難なく弾きこなした。
「おお。すげっ!弾けるんだ。」
リクエストした誠人が驚いている。他の面々も奈月がここまで弾けるとは思っていなかったので、かなり驚いた。
「淳史は弾けねーのにな。」
「うるせー。」
圭吾の言葉に淳史が怒る。図星なので、それしか言えない。
「おい。淳史の代わりに奈月ちゃん出すか?」
「え?」
「は?ちょ、ちょっと・・。」
突然の誠人の提案に奈月と淳史が驚いた。しかし、他のメンバーは結構ノリノリだった。
「いいな、それ。」
「そうしようぜ。」
勝手に進む会話に居たたまれなくなった淳史は思わず楽屋を飛び出した。
「あ、おい。」
「淳史!戻って来い!」
メンバーの呼びかけには応えず、淳史は出て行ってしまった。武人は一番に追いかけた。
「あ、奈月ちゃん!」
今度は奈月もギターを外して圭吾に渡すと、飛び出して行ってしまった。

「おい!淳史!待てって。」
淳史は外まで出て行ったが、武人はその足の長さと速さで敦史に追いついた。淳史の腕を掴む。淳史は俯いたまま呟いた。
「何であんなやつ、連れて来たんだよ。」
「え?」
淳史は振り返って怒鳴る。
「何であんな女連れて来るんだよ。」
「あんな女って言うな。」
武人は間髪入れずに怒った。
「お前の好きな人とか言ってたけど、あんなののどこがいんだよ!」
淳史の言葉にかっとなった武人は淳史の頬に平手打ちした。パチンと高い音が鳴った。
「ってぇ。何すんだよ。」
「奈月ちゃんのこと、何にも知らないくせにそんなこと言うな。」
「・・・。」
武人があまりに本気で怒ったので、淳史は何も言えなくなった。
「武ちゃん!」
追いかけて来た奈月が追いつく。淳史は奈月を見てそっぽを向いた。奈月が追いかけてくると思わなかった武人は驚いた。
「奈月ちゃん。どうして?」
「気になったから。淳史くん、みんなの冗談に本気になってたみたいだし。」
奈月の言葉に、淳史は逆ギレする。
「何が冗談だよ。あいつらの言うことは本気に決まってんだろ?実際、お前の方が上手かったしっ・・・!」
ゴン!
「ってぇ。」
イキナリ頭上に落ちてきた拳は、脳天を直撃し、かなりの痛みが走った。思わず頭を抑える。
「奈月ちゃんと言え。奈月ちゃんと。」
『お前』呼ばわりしたのが気に食わなかった武人が怒っている。淳史はまたそっぽを向いた。
奈月は溜息をついて、口を開いた。
「なら聞くけど。淳史くんはどうしてギタリストになったん?ギターが好きやったからやないん?」
淳史は奈月の問いに答えられなかった。
ギターを始めたきっかけがあまりに不純な動機だったからだ。初めて好きになった女の子にギターが弾ける人が好きだと聞いてから、ギターを始めた。今度はバンドやってる人が好きと言われ、智広にお願いしてムリヤリ入れてもらった。ギターが純粋に好きという訳ではない。
「俺は・・・。」
言葉に詰まる淳史に奈月が話し始める。
「うちがギターに初めて触ったんは、幼稚園やった。」
何をイキナリ言い出すのかと、二人とも目が点になる。
「お兄ちゃんのギター、勝手に触って・・・怒られた。ただお兄ちゃんがいつも弾いてるのを見とったから、いつか弾いてみたいって思っとった。中学校んなって好きになった男の子がすごいギター好きな子で。やからうちもギター始めた。すんごい不純な動機。・・・やけど、弾いてるうちに楽しくなって。弾けるようになんのが嬉しくて。やから一生懸命練習した。さっきの曲やって手にマメを作って、練習したんやから。」
奈月は自分の手をぎゅっと握り締めた。淳史を見据える。真っ直ぐな目に淳史は目を合わせられなかった。
「淳史くんは?楽しくないん?」
奈月に言われ、少し考えた。全然楽しくないわけじゃない。それなりに楽しい。でもメインはギタリストじゃない。どうしてもヴォーカルの方に人気が行くし、カッコイイ智広の方が正直モテる。それにギターは圭吾の方が上手い。
「奈月ちゃん。こいつ、女にモテたいからギターとかバンドとか始めたから・・。」
「余計なこと言うな。」
武人の言葉に淳史は噛み付くように怒鳴った。
「動機なんてそんなもんやって。」
奈月の意外な言葉に淳史は呆気に取られる。
「うちもただ好きな男の子と一緒にギター弾けたらええなぁっていうだけやったし。お兄ちゃんやって、バンド始めたんはモテたかっただけみたいやし。」
「そういや、奈月ちゃんのお兄さんって何してる人?」
気になったらしい武人が尋ねる。奈月は笑顔で言葉を濁した。
「・・音楽関係。それより、ギタリストやっとるってことは、バンドのオリジナル曲とか弾くんやろ?それって淳史くんしか弾けんし、淳史くんにしか出せん音やと思うよ。みんなやってそんなこと分かっとるよ。やからさ、戻ろう?きっとみんな心配しとるよ。」
奈月の言葉に淳史はズキンときた。
今まで何をしていたんだろう?ただモテたいから、ギターを弾いていた。でも彼女や圭吾は、ギターを弾くのが楽しくてたまらないのだろう。他のメンバーだってきっとそうだ。
戻る間、淳史の思いの中には、いろいろな思いが葛藤を繰り広げていた。

「おお。帰って来た。」
気づいた誠人が言うと、みんなが入口を見た。
「淳史。どうしたんだよ。俺たち、何か変なこと言ったか?」
淳史が出て行って気にしたらしい幸介が、歩み寄る。淳史は一拍置いて口を開く。
「いや。ごめんな。何でもない。ちょっと・・・気分悪くなったんだ。」
「そうか?」
淳史は上手く誤魔化そうと嘘を突いた。幸介はあまり納得していないようだが、飽くまでその嘘を突き通そうと淳史は何でもないフリをした。
「ああ。もう大丈夫だから。ごめんな。心配かけて。」
「いや。もう治ったんか?」
心配そうに覗きこむ幸介に、淳史は頷いた。
「ああ。大丈夫。」
「そうか。」
淳史の言葉に、幸介はやっと納得したらしく、話題が終わる。
「なあなあ。さっき聞いたんだけどさ。秀一くんも弾けるらしいよ。ギター。」
誠人が口火を切る。
「そうなんだ?」
初耳だった武人が尋ねると、秀一は照れくさそうに答えた。
「大したもんは弾けないよ。独学だし、始めたの最近だし。」
「武の友達って音楽繋がりなんだな。」
智広が笑顔で言う。奈月たちはその意味が分からず、首を傾げていると幸介が補足する。
「こいつ、バンドでドラムやってたんだけど、可哀想にこないだ解散しちゃったんだよ。」
「武ちゃん、ドラムできるん?」
「初耳だ。」
奈月と秀一が口々に言う。
「三人でバンドできんじゃん?」
「でもヴォーカルもベースもいねーじゃん。」
誠人が口走ると、淳史がツッコむ。
「どっちかがヴォーカルになればいんじゃん?ギターヴォーカルとかさ。」
誠人は淳史のツッコミに動じず、秀一と奈月を見比べた。
「ああ。武人は破壊的な音痴だかんな。」
「バラすなよ。」
圭吾の言葉に、武人の顔が赤くなる。どうやら本当らしい。
「奈月ちゃん、歌ってみてよ。」
「え?」
誠人の思わぬ発言に、奈月は驚いた。
「それいいな。」
「ちょっと何か歌ってみ。」
みんなが誠人の意見に賛同し始める。
「何かって何・・・?」
イキナリ言われても歌えない。
「圭ちゃん、何かギターで伴奏できるのやってみてよ。」
誠人が圭吾を促す。
「は?何で俺まで巻き込むんだよ。」
「いーじゃん、いーじゃん。アカペラじゃ歌いにくいだろうしさっ。」
誠人の能天気さに圭吾は頭を抱えた。
「しゃーねーな。」
圭吾はアコースティックギターに持ち変えると、適当に曲を弾き始めた。
「歌えそうなのあったら、入ってきて。」
圭吾の言葉に奈月は頷いた。
「にしても・・・何でこんなことになっとん?」
奈月が今更ながらの疑問をぶつけると、誠人がまた能天気に答える。
「まぁいいじゃん。お遊びだと思ってさ。」
誠人の性格が何となく分かってきた奈月は、諦めることにした。何を言ってもどうせ無駄だろう。
その時、圭吾が弾き始めた曲はとても聞き覚えがあった。
「それって・・・・[キミヲオモウ]?」
曲名を尋ねると、圭吾は頷いた。この曲は、良く知っている。奈月の兄、一真のバンドsparkleの曲で、亡くなった彼が良く歌ってくれた曲だった。
「歌える?」
圭吾に聞かれ、奈月は動揺を隠しつつ頷いた。
「じゃあイントロから弾くから、入ってな。」
サビを弾いていた圭吾は、今度はイントロから弾き始める。そのギターに、奈月の声が乗る。
『上手い。』
全員一致でそう思った。まさかイキナリでこんなに歌えるとは・・。それに加えて圭吾にも感心した。奈月とのコンビネーションは最高だった。
歌い終わると拍手が起こった。恐らく他の楽屋の人には何が起こったのか、分からないだろう。
「すっげ上手いじゃん。」
「奈月ちゃん、ヴォーカルでいけんじゃん?」
「秀一、歌わなくてすんだな。」
口々に勝手な意見が飛び交う。奈月は苦笑して誤魔化した。
「ってかさ、ゲストで出してみない?」
誠人がまた急に変なことを口走る。メンバーは慣れているのか、さほど驚かなかった。驚いたのは奈月たちの方だった。
「奈月ちゃんを?」
智広が確認するように聞き返す。
「そ。なんかさ、奈月ちゃん出たらいつもと違うライブになると思うんだけど。どお?」
「そりゃま、そうだろね。」
誠人の言葉にメンバーは顔を見合わせた。確かに面白い企画ではある。
「一曲だけでいいからさ。どう?」
「俺たちがよくっても、本人がよくなきゃ、その話はなしだろ。」
圭吾の言葉に他のメンバーが納得する。
「ってことで、どうだろ?奈月姐さん。一曲ライブで歌ってみない?」
智広が奈月に話を振る。まだ実感が沸かない奈月は、思わず聞き返す。
「えっ?歌うって、うちが?」
「そう。」
奈月は話の進み具合の早さに混乱していた。
「歌うって・・・うち、ライブで歌うほど、上手くないで。」
「大丈夫だって。俺、奈月ちゃんの歌にカンドーしたもん。」
誠人が笑う。それでも急にそんなことを言われても困る。
「そう言われても自信ないし・・・。」
「やってみなよ。奈月ちゃん。何事も挑戦だって。」
武人が奈月の肩を叩き、励ました。
「さっきの歌、よかったよ。あたしも奈月ちゃんの歌、ライブで聞いてみたい。」
里佳にまでそう言われると、何となくOKしなきゃいけないような気がしてきた。
「でも、何歌うん?」
それは重要だった。歌うとなれば、メンバーが演奏できる曲じゃないと意味がない。
「そりゃ、奈月ちゃんの好きな歌でいいよ。」
「あ、でも演奏すんのは俺たちだから、簡単なヤツね。」
誠人の言葉に幸介が付け足す。
「ってか、そんなこと勝手に決めちゃっていんですか?」
秀一が口を挟んだ。
「うん。大丈夫、大丈夫。ここのライブ、結構俺たちの好き放題やってるから。」
誠人は笑って答えた。メンバーも頷きながら笑う。
「「そういうもん?」」
「そういうもん。」
奈月と里佳が同時に問うと、メンバーが頷きながら答えた。
「よし。そうと決まれば、ちょっと時間あるから、あたし、アトリエ戻って、ステージ衣装になりそうなの、見積もってくる。」
「アトリエ?」
里佳の言葉に奈月が聞き返す。
「うん。あたしの家じゃ狭いから、知り合いに格安でアパートの一室借りてるの。主に服とか作ってるとこだから、『工房(アトリエ)』って呼んでるんだ。」
「そうなんや。じゃあ、今日作ってきとった服もそこで?」
「そうだよ。」
奈月の問いに、里佳が頷く。
「すごいね。」
感心する奈月に、里佳は苦笑した。
「すごくないって。それより奈月ちゃんは、ちゃんと練習しててよ。武は曲決まったらメールちょうだい。」
「「はーい。」」
里佳は奈月に注意をし、武人にお願いすると、アトリエに戻って行った。
「で、問題は何の曲にするかだな。」
圭吾はギターの調律をしながら呟いた。
「さっきのでいんじゃん?」
誠人が提案すると、幸介が確認した。
「[キミヲオモウ]でってこと?」
「うんうん。」
「お前演奏しないから、結構適当言ってるだろ。」
「ギクッ。」
圭吾の言葉に、誠人が動揺する。
「そ、そんなことないよ!さっきの曲、本気で良かったからさ。奈月ちゃんの声質にも合ってたみたいだしっ。」
言い訳を並べ立てる。
「奈月ちゃんは?何か他にやりたい曲とかある?」
そんな誠人を無視し、智広が奈月に訊く。
「うちは構わんけど・・・。」
「本人も言ってるし、ねっ?」
誠人がごり押しする。メンバーは顔を見合わせた。
「それなら、圭吾のギターだけで歌うとかでもいいかもな。」
「あん?」
智弘の言葉に、圭吾が睨む。智広は睨みを怖がるでもなく、自分の意見を述べた。
「今からやっても、まともに演奏できるわけないよ。時間ないし。俺らが余計な音加えるより、奈月ちゃんの声と圭吾のギターで十分だよ。バラードだから大丈夫だって。」
智広の意見は最もだったので、圭吾は反論できなかった。
「でもさ、この曲やるんだったら、圭吾のギターだけじゃ、迫力かけるだろ。」
武人が口を出す。するとメンバーは眉をしかめた。
「って言っても、俺ら演奏できねーし。」
「アレンジしたら?」
「どうやって?」
武人の提案はまともだったが、メンバーにアレンジャーはいない。オリジナル曲を作るのとアレンジするのでは、やはり違う。全員が肩を落とした時。
「なぁ。このシンセ、使えるん?」
不意に奈月の声がした。メンバーが見ると、シンセサイザーの前に奈月が立っていた。
「シンセなんてあったんだ。」
武人が驚く。ずっとそこにあったはずなのだが、特に気にしていなかったため、視界に入っていなかったのだ。
「使えるとは思うけど・・・。」
「どうすんの?」
興味ありげに誠人と智広が奈月の近くに集まる。それを見て、負けじと武人も近寄った。キーボードを立ち上げた奈月は慣れた手つきで音を作り始めた。
「何やってんの?」
淳史が尋ねると、奈月はキーボードから目を離さずに答えた。
「音、作ってるんよ。あんま時間ないし、練習まともにできんから。お客さんに聞かせるんやから、ちゃんとしたものの方がええやん。」
メンバーは顔を見合わせた。客がいる。そう、ライブには自分たちだけじゃなく、聞いてくれるお客がいるのだ。ライブは自分たちだけじゃない。聞いてくれるお客がいるから、ライブが成り立っているのだ。忘れていたわけではないが、見失いかけていた。ただ自分たちが楽しいってだけじゃダメなんだと、今更ながらに気づく。
メンバーはもう一度奈月を見た。その表情は真剣そのものだった。みんなの視線を感じ、奈月は顔を上げた。
「どうかしたん?」
「いや、別に。」
奈月の問いに智広が答える。
「なぁ、アレンジどうする気なんだ?」
圭吾が奈月に声をかける。
「あ、うん。今考えてるんは、イントロ部分にサビを持ってきて、そこはアカペラで歌って、それからギターを入れてAメロ、Bメロ。ここはギターだけ。で、サビに入ってから他の楽器を入れようと思ったんやけど・・。どうかな?」
「いんじゃない?」
奈月の意見に圭吾が賛成する。
「他の楽器って?こいつら、演奏すんの?」
武人が奈月に訊く。練習時間はあまりないので、不安なのだろう。
「言うてたやん?練習する時間がないって。やからシンセで音作ってるんよ。楽器演奏する代わりに、これ入れたら十分やと思う。」
「そっか。」
シンセサイザーで音を作っていたのは、その為なんだと今頃気づく。
「俺やる!」
幸介がイキナリ挙手した。
「は?」
幸介のイキナリの申し出に圭吾が目をむく。
「何言ってんだ?できないって言ったの、お前らだぞ。」
シンセサイザーで音を作っているのだってその為なのだ。
「だってさ、話聞いてたら楽しそうなんだもん。やっぱやりたいなぁって。」
「やりたいなぁって、お前なぁ。」
圭吾は頭を抱えた。
「練習時間少ないのは分かってる。でも、シンセに打ち込んだ音より、本物の音のがいいと思う。だから・・だから・・・。」
上手く言葉を見つけられず、しどろもどろになる。圭吾はしょうがないと、溜息をつく。
「分かった。けど、練習時間ないからって妥協するつもりはない。弱音吐くなよ。」
「うん。」
幸介は力強く頷いた。
「俺もやりたい。」
幸介の後ろから智広が申し出る。
「いいのか?ベースは難しいぞ。」
圭吾が脅す。原曲のベースラインは、結構難しい。それは智広もよく分かっていた。
「だってさ。二人見てたらやりたくなったんだ。」
「でもなぁ・・・。」
圭吾がなかなか納得しない。難易度を分かっているからこそ悩む。
「大丈夫やって。シンセで補助するから。」
奈月が圭吾を説得すると、圭吾も納得した。
「まぁそれならいいか。」
「俺も・・。俺もやる!」
淳史がやけくそっぽく叫ぶ。ツインギターなので、補助的な位置ではあるが、それでも難しいと淳史にもよく分かっていた。圭吾はやっとやる気になった淳史を見ると、ニヤッと笑った。
「そうだな。お前はこれを機に特訓してやる。」
圭吾の睨みに淳史は後ずさった。淳史は思わず拳をぎゅっと握った。
「が、がんばる。」
「いいなぁ。俺だけ何にもできない・・。」
楽器を全くできない誠人が泣きそうな声になる。それに気づいた奈月が声をかける。
「あ、やったら、ハモってみる?」
「原曲にはないじゃん。」
奈月の意見に智広がベースを抱えながらツッコむ。
「作ったらええやん。」
あっさりと笑顔で返され、智広は言葉を失った。あまりにも簡単に言いすぎな気がしてならない。
「このバンドの中でアレンジとかできる人っておる?」
奈月の問いにメンバーは顔を見合わせた。
「この中じゃ、やっぱ圭ちゃん?」
誠人が答えると、奈月は圭吾の隣に立つ。
「圭吾くんはどうやったらええと思う?」
「そうだなぁ。」
奈月はどこからか紙とペンを持ってきた。二つ持ってきた一つを圭吾に渡す。奈月はとりあえず自分が持っている紙に曲のコード進行を書き始めた。
「譜面書く?」
智広が持参していた五線紙を奈月に渡す。
「ありがと。」
奈月は受け取ると、それにメロディーラインとコードをさらさらと書いた。
「覚えてんの?」
驚き入ってる智広の問いに奈月は顔を上げた。
「覚えとるって言うか、頭に流れたメロディーを書いただけって言うか・・・。」
「分かる、それ。」
智広が賛同する。
「俺も曲書くとき、そうだもん。」
「それと一緒。」
奈月は笑って答えた。それが書き終わると、立ち上がった。
「圭吾くんは、これ考えててね。・・幸介くん、ちょっとドラム叩いて欲しいんやけど。」
「あ、ドラムはこっちなんだ。」
幸介も立ち上がり、奈月と一緒に部屋を出て行った。手持ち無沙汰の誠人が圭吾に近づく。
「圭ちゃん。俺、何したら・・?」
「この曲、お前歌えるか?」
「え?」
突然の圭吾の言葉に誠人が固まる。
「歌えるかって訊いてんだ。」
「・・・多分。」
「多分か。」
圭吾はまた考え込んだ。
「あ、俺、今CD持ってますよ。」
それを見ていた秀一が声をかける。
「CD?」
「はい。」
秀一は自分のバックからCDプレーヤーを取り出した。電車の中で聞くために持って来たCDが役に立つとは思っていなかった。
「アルバムなんですけど・・・。」
「智、デッキあったろ?」
「うん。」
圭吾に言われ、智広は小さなCDラジカセを持ってきた。秀一から数週間前に出たばかりのsparkleのアルバムを智広に渡した。智広はそれを受け取ると、デッキに入れた。
「えっと十曲目です。」
智広は言われたとおり、十曲目に合わせ、再生ボタンを押した。
流れ出した音楽に全員で耳を傾けた。

その頃、幸介と奈月は隣の部屋でリズム構成を思案していた。
「幸介くんって呼びにくいから、幸くんでもええ?うちんことは奈月でええから。」
「うん。いいよ。」
「そしたら幸くん。原曲のリズムって分かる?」
「何となくは・・・。」
幸介は記憶をたどってドラムを叩いた。
「うん。そんな感じ。でさ、ここの部分をこう叩いて貰いたいんやけど。」
奈月はさっき書いた楽譜を見せ、幸介に奈月のイメージしているアレンジを伝えた。

「これを・・・アレンジすんだよな。」
原曲を聞き終わった誠人が本当にやるのか、と言いたげに口を開いた。言いだしっぺなので、後には引けない。
「そうだ。」
圭吾は冷たく一言だけ返した。
「でも奈月ちゃんの中では、イメージできてんだろ?」
智広はCDを取り出し、秀一に返した。
「だろうね。」
圭吾は言い放った。
「ハモリってどうやってやるんだ?」
「さぁ?」
誠人の問いに圭吾は曖昧に答える。
「考えててとかって言ってなかったっけ?」
圭吾の様子に智広は苦笑いを浮かべた。
「戻って来た。」
しばらくして奈月がみんなのいる部屋に戻って来る。
「幸介は?」
「しばらく練習するって。」
「で、姐サンのイメージは、どんなもんなんでしょ?」
智広が聞くと、奈月はシンセの前に立ち、操作する。すると、さっき打ち込んだであろうリズムが鳴り始めた。
「ベースはこんな感じ。」
そう言ってまたボタンを押すと、今度はベースラインが奏でられる。
「難くない?」
「言うたやろ?シンセで補助するって。やから大体こういう感じっていうイメージをつかんで欲しいんよ。」
「分かった。やってみる。」
智広はベースを抱えた。シンセを聞きながら練習を始める。
「ギターは圭吾くんに任す!ハモリも入れるから誠人くん、こっちな。」
奈月はてきぱきと進める。
「すげー早いなぁ。」
武人は傍観しながら言った。時間がないのでそうしなければいけないのだが、思わず関心してしまう。
「圭吾。俺はどうしたら・・・?」
淳史は困りながら圭吾に尋ねる。
「そーだな。おい。奈月、ちょっと。」
「何?」
いつの間にか呼び捨てしている圭吾に武人がムッとする。眉をひそめて呟く。
「呼び捨て?」
「いんじゃん?年上なんだろ?」
気づいた秀一が武人をなだめる。
「そうだけどさ。」
武人がむくれているのにも気づかず、奈月と圭吾はギターラインの相談をしていた。楽譜を読むのが得意ではない誠人と淳史は置いてきぼりにされていた。
「じゃあ、それで。」
「うん。よろしく。」
そして奈月と圭吾は別れ、それぞれのアレンジを始めた。

三十分ほど練習した後、圭吾が奈月に声をかけた。
「そろそろ合わせてみるか?」
「そうやね。」
「んじゃ、隣の部屋行くぞ。」
圭吾が立ち上がると、他の四人も移動した。秀一と武人も付いて行く。だが部屋は狭いのでメンバーたちだけが中に入り、秀一と武人は廊下に立っていた。
「あれ?何してんの?廊下で。」
ちょうど戻って来た里佳が秀一たちを見つけ、近づいた。
「おかえり。今から合わせるんだって。」
秀一が答える。
「へー。」
里佳は部屋を覗いた。狭い部屋にメンバーがスタンバイしていた。
「んじゃ、行くぞ。」
圭吾がカウントを取る。まず奈月のアカペラから入る。その瞬間、聞いていた三人はその歌声に引き込まれた。Aメロに入ると、音が加わっていく。段々厚くなっていく音が胸に響く。
演奏が終わると、三人は拍手をしていた。
「すごい。さっき作ったとは思えない。」
「でもやっぱ不安だよ。ここで上手くいっても本番で上手くいくかどうかさ・・・。」
幸介が俯く。
「幸介。そんなこと言ってたら余計上手くいかないよ?」
智広が慰める。
「そうそう。それにシンセで本番は補助するから大丈夫やって。」
奈月は言葉を付け加えた。

五時四十分。そろそろ開演の時刻が迫ってきた。出番が最後だとは言え、もう準備はしておかなければならない時間だ。時計を見た里佳がメンバーに声をかける。
「ねぇ。そろそろ始まるんじゃない?」
「あー、そうだな。」
ベースを抱えて練習をしていた智広が頷く。
「奈月ちゃん、着替えて。服持ってきたから。」
里佳は袋をかざした。
「着替えるってどこで?」
ここには着替えるスペースなんてない。
「幸介んとこで着替えたら?幸介にどいてもらって。」
智広が提案し、奈月と里佳はそのとおりにした。
しばらくして二人が戻って来る。
「おお。」
奈月の変わり様に全員が声を揃えた。
「何か恥ずかしい。」
奈月は今までジーンズに長袖Tシャツ、髪型はポニーテールだった。それが今はふわっとしたロングスカートに白いセーター、前髪を八:二で分けて長い後ろ髪は後ろでお団子にしていた。
「奈月ちゃん、カワイイ。」
武人が感動する。
「ありがと・・。」
奈月は言われ慣れてない褒め言葉に頬を赤らめた。
(うぉぉ。ちょーカワイイじゃねぇか!!ちくしょうめ!)
武人は一人で悶えていた。
「武が変だ。」
「いつもじゃん。」
「あ、そうか。」
メンバーは悶える武人を【変】の一言で片付けた。

「おーい。そろそろ開けるぞぉ。」
店の従業員が今夜出るバンドたちに呼びかけた。
「はーい。」
誠人が返事する。と同時に緊張が高まる。
武人と秀一と里佳は客席に移動し、メンバーたちは裏で待機することになった。

そして開場になり、フロアが客で埋まり始める。後ろの方で陣取っていた里佳たちの前にも客が押し寄せてくる。
「すんごいたくさん来てるね。」
里佳が続々といっぱいになっていくフロアを見つめ呟いた。
「だな。まぁ五組もやるなら、こんなもんじゃね?」
ライブには何度も来ている武人が、客を見ながら言う。
「てか、あたし、全然見えないんですけど。」
背の低い里佳はステージが全く見えなくなっていた。
「おいら見えるもーん。」
意地悪く言った武人のお腹に肘鉄が入る。
「ぐはっ。」
「お前、バカ?」
秀一は頭を抱えた。里佳が食らわせた肘鉄はもろにお腹に入ったらしく、武人はうずくまった。
「わ、分かったよ。特等席用意させていただきます・・・。」
武人は泣きながら店のマスターを探した。

そして開演時間。一発目のバンドから大きな盛り上がりを見せた。奈月たちは裏手からそのライブを見ていた。荒削りではあるが、将来有望なバンドばかりだった。
それよりも驚いたのは、客とは目と鼻の先しか開いていないことだった。こんな状況で歌えるんだろうか?と不安に駆られる。
「奈月ちゃん、緊張してんの?」
誠人に聞かれ、奈月は頷いた。
「こんな近いと思わんかった。」
「あはは。確かにね。」
手が届きそうな距離に怖気づく。
「大丈夫。歌い始めれば緊張も解けるよ。」
「そうかなぁ・・・?」
思わず半信半疑になってしまう。
「大丈夫だって。リハは大丈夫だったんだからさ。」
智広が奈月の肩をポンッと叩いた。
「うん。そうやね。」

あっという間にLUCKY STRIKEの出番になった。
「奈月ちゃんは最後にちゃんと紹介するからね。」
誠人が奈月に確認すると、奈月は頷いた。
四組目の演奏が終わりに近づくとLUCKY STRIKEのメンバープラス奈月は円陣を組んだ。誠人が手を真ん中に差し出すと次々と手が重なった。智広に促され、奈月は一番上に手を重ねた。
「今日はいつもと違うライブができそうな気がします!」
「奈月ちゃんがいるからだろ。」
誠人の言葉に智広がツッコむ。メンバーはクスクス笑っている。誠人はわざとらしく咳をした。
「コホン。とにかく、楽しみましょう!」
「「「「オー!!」」」」
そしてLUCKY STRIKEのメンバーはステージに上がっていった。