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  ACT.12 everyday life 12-5  

「連れてきましたー」
「お。おおきに」
 校門で待っていた男が笑顔でその二人にお礼を言った。奈月は男を見て、驚いた。
「ちい兄……何でこんなとこおるん?」
「え? お兄さん?」
 奈月の発言に、二人のクラスメートも驚く。するとちい兄と言われた男はニッと笑った。
「そうやでー。奈月呼んできてくれておおきにな〜」
「いえ……」
 彼女たちは照れながら、奈月たちをを残して帰って行った。
 二人を見送り、自分たちも歩き始める。奈月は兄の顔を睨んだ。
「で、何でこんなとこにおるん? 仕事は?」
「あー。バイト辞めた」
 兄の言葉に奈月は呆れる。
「はぁ? また?」
「またとか言うなや。俺には合わんかったんや」
 そう言って兄は不機嫌そうにプイっと横を向いた。
 この二番目の兄、浩次は一真の二歳下、奈月の九歳年上なのだが、末っ子の期間が長かったせいか、かなりの末っ子気質なのである。
 奈月は溜息をついた。
「はぁ……。で、何しに来たん? こんなとこまで」
「そりゃぁカワイイ妹の顔見るためやんか」
 さっきとは打って変わって満面の笑みで答える。
 ……嘘だ。バイトを辞めたことを父に怒られて勢いで家出したに決まってる。
 だけど奈月は何も言わなかった。ここで言っても仕方がない。
「でもよう分かったね? うちの学校」
 そう言うと、浩次はまた笑った。
「あぁ。前にオカンに聞いたからな」
「そっか」
 母親は入学式に出席したので、奈月の学校を知っている。それよりも『前に聞いた』ということはこういうときのためにリサーチしておいたのだと気づき、奈月は呆れた。
 ちなみに奈月がまだ実家にいた時も、浩次は親に怒られるとよく家出をした。大抵は地元の友達のところに入り浸っていて、通報を受けた奈月が連れ戻しに行っていた。
「ちい兄さ、お兄ちゃんに言うたん?」
「ん? 言うてるわけないやん」
 あっけらかんという浩次に、奈月は頭を抱えた。今まで家出をしても一真の元に来なかったのは、一真が仕事で捕まらないこともあるが、一真に父親同様に怒られるからだった。
 だが、今回はなぜ来たのか、奈月は気になった。
「ちい兄、どうせまた家出したんやろ?」
「え……バレた?」
 浩次は苦笑しながら、人差し指で頬を掻いた。
「バレたらお兄ちゃんに烈火の如く怒られんで」
「やから奈月んとこ来たんやないかい」
「……」
 この男は……。呆れ過ぎて言葉もない。
「分かったよ。何とか誤魔化すけど、バレた時は知らんで」
「サッスガ! やっぱ奈月は話早いなぁ」
 浩次は調子よく奈月に抱きついた。
「ちい兄、暑い」
「あーーーー!」
 突然背後で叫び声がした。何事かと思ったら、武人が顔面蒼白でこっちを見ていた。隣にいた秀一も驚いた顔をしている。
「あ、武ちゃんに秀ちゃん。今帰りやったんや」
「ん? 友達?」
 浩次がようやくはがれたので、奈月は頷いた。
「奈月ちゃん! 誰? この人」
 武人が慌てながら、浩次を指差した。その慌てように、隣にいた秀一がポンポンと肩を叩いた。
「武。落ち着けって」
「落ち着いてられるかー」
 何故か秀一に怒鳴る。
「あー。この人はうちの二番目のお兄ちゃん」
「へ?」
 奈月が紹介すると、武人はさっきと一変する。
「何だー。ってお兄さん、二人いたの?」
「あれ? 言うてなかったっけ?」
 奈月がそう聞くと、二人は頷いた。
「じゃあ奈月が今一緒に住んでるのは、上のお兄さん?」
「そうやで」
 秀一の問いに、奈月が頷く。
「ちい兄は、実家に住んどるから」
「あれ? じゃあ今日は?」
 武人もどうしてここにいるのか気になったらしい。すると、ちゃっかりしている浩次は奈月が返事する前に口を開いた。
「カワイイ妹の顔見に」
「へぇ」
 奈月は自分の兄に呆れたが、何も言わなかった。ツッコむのは非常にめんどくさい。
「あれ? でも今日奈月、バイトじゃなかったっけ?」
「そうなんよね」
 秀一が気付くと、浩次がやけに興味を持った。
「奈月ってどんなとこでバイトしとんの?」
 そう聞かれると、奈月はニヤッと笑いながら口を開く。
「ちい兄の好きそうなところ」
 そう言うと、何やら勝手に妄想を始めた。やはりツッコむのは面倒くさいので放っておく。
「じゃあ奈月ちゃんがバイトしてる間、お兄さんはどうするの?」
 武人に聞かれ、妄想を繰り広げていた浩次が我に返る。
「奈月のバイト先についてくけど?」
「何でそんな当たり前みたいに言うてるん?」
 奈月は即行でツッコミを入れた。それを見て、秀一が笑う。
「秀ちゃん、何笑っとん」
「いやぁ……漫才だなぁと思って」
 秀一にそう言われ、奈月は溜息をついた。別に漫才をする気はさらさらないのだ。
「てか奈月ちゃん、お兄さんついてっても大丈夫でしょ? あそこ結構自由だし。皆入り浸ってるじゃん」
 武人がケラケラと笑いながら言った。
 確かに誠一のバンドメンバーである貴司や晋平、直也を始めとして最近では泰仁も店によく来るようになった。そして大抵入り浸り、営業妨害だと誠一か沙紀に追い出される。時たま追い出されるメンバーの中に店長が混じってるのは、奈月の見間違いではないはずだ。
 奈月は浩次を見やった。
「ちい兄、ホンマについて来るん?」
「うん!」
 満面の笑みで答える。奈月は頭を抱えたが、ほったらかしにして何か問題を起こされても困るので付いてきてもらうことにした。
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