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  ACT.13 brother&sister 13-1  

 駅で武人と秀一と別れた奈月と浩次は、ようやく奈月のバイト先である楽器店に着いた。
「え? ここ?」
 浩次が驚き、思わず確認する。
「そやで」
「えー」
 ものすごくがっかりされたので、奈月は顔をしかめた。
「何なん? その反応」
「えー。だって俺の好きそうなとこって言うたやん」
 何故か口を尖がらせて、子供のように怒っている。
「ちい兄、楽器好きやろ?」
「好きやけどー」
 あまりにもふてくされるので聞いてみた。
「何やと思たん?」
「メイド喫茶」
 その答えを聞いた瞬間、奈月は勢いよく店のドアを開け、さっさと中に入って行った。
 いくら何でも妹がそんなところでバイトしていると考えるだろうか? 冗談にしてはやけに顔が真剣だった。
「奈月ちゃん、おかえりー」
 入口付近にいた誠一が声をかける。奈月は条件反射のように答えた。
「ただいまです」
「あれ? 何か怒ってる?」
 そう言われ、奈月は我に返った。誠一に当たっても仕方ない。
「いえ。すいません。呆れたんです」
「誰に?」
 そう聞かれ、奈月はまだ店の外にいる兄に目をやった。それに気づいた浩次が、店の中に入ってくる。
「この変態兄貴です」
 浩次が入って来るなり、奈月が指差した。初対面でいきなりそんな紹介をされ、浩次は焦った。
「ちょ! 奈月! 初対面の人になんちゅー紹介しよんや!」
「ホンマのことやろ!」
 喧嘩を始めそうな勢いの二人に、誠一が割って入る。
「えっと……奈月ちゃんのお兄さん?」
 誠一に聞かれ、浩次は胡散臭い笑みを浮かべながら、軽く頭を下げた。
「いつも奈月がお世話になってます」
「いえ、こちらこそ」
 釣られて誠一も頭を下げる。
「うちの二番目の兄の浩次です。ホンマは大阪の実家におるんやけど……」
「カワイイ妹の顔を見に上京しましたー」
 奈月が余計なことを言わないように、浩次がかぶせてきた。
「そうなんですか」
 誠一は浩次の言葉を何も疑わずに相槌を打った。
「急に来たもんやから、追い返すわけにもいかんくって……。邪魔だけはしないようにさせるんで、おらせてもらっても大丈夫ですか?」
「それはいいけど。こんなところで時間潰すの、大丈夫?」
 ここは楽器店だ。喫茶店など飲食店ならまだ時間の潰しようはある、と言うことを誠一は言いたいのだろう。
「大丈夫ですよ。何か楽器触らしとけば」
 奈月がそう言っている間にも、浩次は店内に置いてある楽器、特にギターを真剣に見ていた。それに気づいた誠一が、浩次に話しかけた。
「お兄さんも楽器、何かやられるんですか?」
「うん。ギターをね」
「そうなんっすか? 俺もギター弾くんですよ」
「おお。ホンマか!」
 ギタリスト同士、何やら盛り上がっている。奈月は二人を放置し、着替えにロッカーへと向かった。

 着替えを済ませて戻ってくると、二人はギター談議に花が咲いているようだった。これなら放置しておいても、問題はないだろう。
 すると店のドアが開いた。
「お。沙紀くん、ちょうどいいところに」
 入ってきた沙紀を、誠一が早速捕まえる。
「何っすか」
「この人、奈月ちゃんのお兄さん。ギタリストなんだって!」
 何故か誠一が沙紀に浩次を紹介した。どうやらテンションが上がっているらしい。
「沙紀? あぁ。奈月と兄貴から話聞いとるよ。妹が世話になってます」
 浩次はそう言って手を差し出した。沙紀は一瞬驚いたものの、同じ様に手を差し出し握手をする。
「あ、いえ。こちらこそ」
 今度は誠一が沙紀を浩次に紹介し始める。
「彼はベーシストなんですよ。あ、そういや、こないだ奈月ちゃんのバンドに入ったんだっけ?」
「えぇ、まぁ」
「へー」
 そう相槌を打ちながら、浩次は奈月に近づいた。
「奈月ちゃん? お兄さんそんなこと一言も聞いてませんけど?」
 何やら怒っている。
「え? 言わんかったっけ?」
「聞いてへんよ! ヒドイよ!」
 何故か涙をドボドボ流している。
「……お兄ちゃんに言うただけやったんかな……」
 ここ最近を遡って考えてみたが、どうやら浩次には報告してなかったようだ。
「奈月ぃぃ! こっち来る時、俺に逐一報告するって約束したやんかー! 大体、東京行くって勝手に決めるし!」
 まだ根に持っていたのかと奈月は焦った。
「ご、ごめんって」
 ウジウジとイジケ始めた浩次を、奈月が慰める。何だか変な光景だ。
 一連の光景を見ていた誠一と沙紀が呆気に取られる。
「浩次さんって相当なシスコンみたいだね……」
「そーっすね……」
 誠一の呟きに、沙紀は頷いた。
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