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  ACT.2 crawler is crazy? 2-4  

「いたっ」
 奈月はずるずると引きずられながらやって来た。人気のない寂れた公園に着くと、手をいきなり離された。その勢いで、転びそうになるが、何とか持ちこたえる。
「ごめんね。なんか巻き込んじゃって」
 背の高い男が奈月に謝った。奈月は首を横に振る。
「謝らんでもええよ。別にあんたが悪いわけちゃうし」
「ありがと。そう言ってもらえると、助かるよ」
 満面の笑顔に、彼は素直で純粋な人なんだろうと思った。
「お二人さん、いちゃつくのは後にしてもらえませんかねぇ」
「生きて帰れたらの話だけどねぇ」
 そう言うと一人がナイフを取り出した。
「道具を使うとは……卑怯もいいとこだね」
 背の高い男は呆れた。奈月も同じく呆れる。
「なんだとぉ! てめぇー。言ってくれるじゃねーか」
 ナイフを持った男が男の子に襲い掛かるが、あっさり受け止められる。すると他の三人が一気に襲い掛かった。
「げっ。マジでぇー?」
 一対四では勝ち目はない。もうだめだと諦めかけたとき。
「えっ?」
 襲い掛かってきた二人が同時に倒れた。それには敵方も驚いて動きが止まった。
「あんたら、ええ加減にしーや」
 奈月が冷たい目でこっちを見ている。
 さっきの二人は奈月が後ろから回し蹴りを喰らわしたのだった。もちろん奈月はスカートなのだが、寒いので下にスパッツを履いていたのだ。
 三人の開いた口が塞がらない。
「一人に一気に四人が襲い掛かるなんてみっともないと思わんの?」
 奈月は本気で呆れていた。その言葉にやっと我に返った二人が言い返す。
「るせー。てめぇーも道連れだ」
「女だからって容赦しねーぞ」
 二人は向きを変え、奈月の方に向かってきた。
「だーれが容赦せんって?」
 奈月はいつの間にか一人の胸に入り、顎を掴む。その間にもう一人が奈月の後ろから襲ってきたが、奈月は気配のみで気づき、顎を掴んだまま、回し蹴りを喰らわせた。
 そのまま顎を掴んでいた男をも背負い投げで投げ飛ばす。
「いってぇ」
「あっ。後ろ」
 奈月はその声に敏感に反応した。
 最初に蹴りを喰らった二人が襲いかかって来た。そのパンチをひらりとかわし、踵落としを喰らわせる。 もう一人の内側に入り込み、腹に肘鉄を食らわせる。
 それはほんの数秒間の出来事。
 背の高い男は呆気に取られたまま、その光景をただ見つめていた。

「あっ、おった」
 路地に入り込むと、公園で騒いでいるのが聞こえてきた。もしかしたらとやって来ると、長い髪をポニテールでまとめ、黒いコートを着て、緑のチェックのマフラーを付けている少女を見つけた。間違いなく奈月だ。
 一真が見つけた時には、奈月が一人の男を襲っている四人のうちの二人を後ろから蹴りを入れているところだった。
 一真は何が何だか分からず、ただその様子を眺めていた。
 そのうちに奈月はあっという間に四人の男をやっつけてしまった。
 今までの心配は何だったのだろう? 何だか全身の力が抜ける。
 それにしても今は出て行けない。奈月の他にもう一人いる。バレたら後がややこしいので、一真は近くに隠れた。

「すっげー」
 背の高い男はただそう呟いた。
 奈月はあっという間に倒した男たちを見下ろしながら、パンパンと手をはたいた。
 男はその華奢な身体からは想像できない半端じゃない強さを目の当たりにし、その事実を受け止めるのに、しばしの時間が必要だった。
「大丈夫? 怪我、ない?」
 奈月はボーっとつっ立っている男に声をかけた。
「あっ、ああ。俺は何ともないけど」
「ごめんなぁ。驚いたやろ」
 関西弁がキュートだ。
「うん。ちょっとね」
 思わず本音を漏らしてしまうが、彼女は笑った。
「それにしても何なん? この人たち」
「ああ。よくある逆恨み」
「ふーん」
「あ、名前、言ってなかったよね。俺は湊武人」
「うちは黒川奈月」
「奈月ちゃんか。君もあの高校受けたんだよね」
 奈月が頷く。
「もしかしたら同じクラスかもね」
 武人が笑いながら言う。まだ面接もしてないのに受かった気でいる。結構お気楽な性格なのかもしれない。奈月も思わず笑う。
 ふと奈月は何かを忘れているような気がして、頭をフル回転させた。
「あーっ。お兄ちゃんっ」
 奈月はやっと思い出し、思わず叫ぶ。
 隠れていた一真は驚いた。見つかったのかと思ったが違うようだ。
「ごめん。お兄ちゃんと待ち合わせとるから、もう行くわ」
「うん。また逢えるといいね」
 武人はニカッと笑った。奈月も笑顔を返す。
「じゃーね」
「ばいばい」

 奈月が公園を出ると、見慣れたバイクがあった。
「あれ? お兄ちゃんのや」
「奈月」
「うわっ」
 突然後ろから声がして、奈月は驚いた。
「なんや。お兄ちゃんか。びっくりさせんといてや」
「なんやって何やねんな。こっちは心配したっちゅーねん。ほらっ」
 一真は拾った手袋を奈月に渡した。
「あっ。これ、落としとったんや」
「校門んとこでな。焦ったわ。奈月が誘拐されたんかと思って」
「ははっ。うちもびっくりしたんやけどね」
「とにかく、戻るで。皆も心配しとるやろうし。詳しいことは帰ってからな」
 一真はそう言いながらヘルメットをかぶり、奈月にもヘルメットを渡す。
「うん」
 ヘルメットをかぶると、二人はバイクに跨り、皆が待つスタジオへと戻った。

「何や。そうやったんや」
 事情を聞いた衛がホッと胸を撫で下ろす。
「でも無事で良かったわ。何かあってからでは遅いからな」
 悠一が真面目に言う。
「ご心配おかけしました」
 奈月は一礼した。
「でも結局奈月ちゃんがやっつけたんやろ? その男たち」
 芳春が興味津々で質問する。
「まーね」
 奈月はあまり蒸し返されたくないようで、苦笑して頷いた。
「びびったわ。ホンマ。奈月、強うなったな」
 一真がしみじみと言う。まるで親父だ。
「そんなしみじみ言わんといてよ」
 奈月が嫌そうに一真を睨む。
「とにかく無事で何よりやな」
 悠一がもう一度そう言うと、皆が頷いた。
「明日は面接やな」
 衛が話題を変えると、奈月は頷いた。
「緊張せんようにな」
 芳春が割って入る。
「頑張ってな」
 メンバーの応援に奈月は笑顔で頷いた。
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