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  ACT.2 crawler is crazy? 2-5  

 そして翌日。今日は面接だけなので、昨日よりも早く終わった。例のごとく、一真が迎えに来た。昨日のこともあり、少し早めに来たらしい。
(そういや、昨日の子、見ないなぁ)
 奈月はヘルメットをかぶりながら、ふと思った。これだけの人数が受けに来ているのだから、ちょっとやそっとでは分からないだろうが。
(ま、いっか)
 奈月がバイクに跨ろうとした時、後ろから声がした。
「いたっ。あいつだ」
 奈月が振り向くと、そこには昨日のヤツらがいた。しかも何か人数が増えてる。
「げっ」
 奈月が叫ぶ。察した一真がメットをかぶったまま、こっちを見る。
「なんや。昨日やられてたヤツらやんけ」
 一真は全く動じなかった。奈月は鬱陶しそうに溜息を吐く。
「よー。昨日はよくもやってくれたなぁ」
 いつの間にか、奈月たちの近くに来ていた。奈月が睨む。
「なんや? 生意気に」
 一人がムッとしていた。やられたくせに口だけは減らない。
「やっちまおうで」
 もう一人が後ろから提案する。
「ちょう待て」
 一真がヘルメットをかぶったまま、それを遮る。
「なんや? てめーは」
「俺はこいつの兄貴や。妹にケンカ売るんは勝手やけど、場所考えろや」
 一真は校門から出てくる人波の方に目をやった。敵方もつい見てしまう。
 チラチラと見つつも、巻き込まれないために目を合わせないようにして受験生が出て来ている。
「わっ、分かった。場所変えよう。昨日の公園だ」
 一人が言う。
「おいおい。彼女は関係ないだろ?」
 その時再び頭上から声がした。男たちが振り向くと、そこに昨日の男、武人が立っていた。
「あ? なんやと?」
「だーかーらー、彼女は関係ないだろ。お前らは俺に用があんだろ?」
 武人は皮肉に笑った。
「ああ。そーだよっ」
 一人が武人に殴りかかろうとした。それを一真が簡単に止める。
「場所を考えろって、さっき言わんかったっけ?」
 一真はそいつの手をねじ伏せた。
「いててててて。分かった。じゃあ、昨日の公園で決着つけるで」
 そう言うと男たちはさっさと行ってしまった。
「お兄ちゃん」
 奈月が一真の顔を覗き込む。
「なんや?」
 一真は奈月の方を見た。
「お兄ちゃんは、ここにおって。手出しせんといてな」
「奈月」
 そう言った奈月の瞳が真剣なのに気付いた。一真は溜息を吐いた。
「分かった。でも無茶、すんなよ? 高校、落ちたらヤバいかんな」
 そう返すと、奈月は笑った。
「大丈夫やって。これ、持っとって」
 奈月はヘルメットを脱ぎ、鞄と一緒に一真に預けた。
「おう」
 受け取ると奈月はヤツらの後ろを歩き出した。
「あっ。待ってよ。奈月ちゃん」
 後ろから武人が追いかける。
「ったく。とんだことに巻き込まれたな」
 一真は溜息を漏らした。

 奈月たちは昨日の公園にやって来た。
 相変わらず、人はいない。確かに入り組んだ場所にあるので、あまり人に見られないで済む。
 しかし奈月と武人、二人だけで闘わなければならない。向こうは八人だ。一人で四人を相手にすることになる。
「湊くん、いける?」
 奈月は武人の方は見ず、ただ真っ直ぐ敵を見つめたまま訊ねた。
「ああ。奈月ちゃんこそ大丈夫なのか?」
 武人も真っ直ぐ前を見たまま答えた。奈月は「大丈夫」と頷いた。
「行くで」
 奈月が身構える。
「おう」
 武人も身構えた。それと同時に向こう側が襲い掛かってきた。

「おお。やっとる。やっとる」
 一真が公園に着いた時は既に決闘は始まっていた。
 一真はバイクを公園の入り口に置き、ヘルメットを脱いで、代わりにサングラスを掛けた。そして向こう側には気付かれないような位置で煙草をふかしながら、戦いを見物していた。
(やるな。あの小僧)
 武人は意外と腕が立つようだ。奈月と戦えば、互角ぐらいだろうか。まぁ、それはともかく。止めるべきか否か、一真は時機を見計らっていた。

「もう、それくらいで止めとけ」
 一真は奈月を止めに入った時、ほとんどの男が気絶していた。辛うじて、まだ気絶してないヤツは既に戦意を失っていたので、一真は止めたのだ。
 奈月は言われた通り、手を止めた。
「にしても。だらしないヤツらやな」
 一真が煙草の煙を吐きながら、呆れたように言い放った。
「ホンマにね」
 奈月は制服の埃を叩きながら、頷く。
「帰るで」
 一真は煙草を持っていた携帯灰皿に押し付け、歩き始めた。
「はーい」
「奈月ちゃん」
 奈月が帰ろうとすると、武人に呼び止められた。振り返ると、武人が笑顔を向けた。
「ありがとう」
 お礼を言われ、奈月は驚いた。まさかお礼を言われるとは思わなかったのだ。だが、すぐに笑顔を向ける。
「どういたしまして。じゃーね」
 奈月はそう言うと、兄の後を追いかけた。
「……やべ……。……超かわいい」
 武人はその瞬間にハートを射抜かれた。

 こうして一騒動があったものの、無事に受験が終わり、奈月は中学校の卒業式に出るため実家に帰った。

 そして卒業式が終わると、奈月は合格発表を見るため再び東京に出てきた。

 合格発表日。一真は仕事を抜け出し、奈月と高校にやって来た。一真はバレないようにサングラスをして、奈月の後ろをついて歩く。
 掲示板の前に立ち、奈月の手元を見やる。受験番号を覚え、掲示板に二人で目を移す。
 しばらくして奈月は、一真の袖を引っ張った。
「あっ、た……。お兄ちゃん、あった!」
「ホンマか」
 奈月の指差す方を見て、一真も確認する。確かに受験票と同じ番号だった。
「おお。やったな!」
 一真は嬉しさのあまり奈月を抱きしめた。奈月は照れくさそうに笑った。

「合格? やったやん」
 スタジオに一真と一緒に戻ってきた奈月は、皆に報告をした。メンバー全員、自分のことのように喜んでくれた。
「今夜は飲み会やなっ」
 芳春が提案する。
「結局それかいっ」
 衛は芳春にチョップした。頭をさすりながら、芳春は衛を睨んだ。
「でもまぁ、えんちゃう? せっかくのお祝いなんやし」
 和之が納得させる。
「別に構んけど。俺は」
 こいつも飲みたいだけじゃないかと思いながら、衛はちらっと一真の方を見た。
「衛が全部準備してくれんならええで」
 一真が意地悪く、微笑む。
「よっしゃあ。そしたら奈月ちゃんの合格祝いに俺が腕によりをかけて、ごっつうまい料理作ったるわ」
 衛がガッツポーズをする。そしてメンバーは仕事を差し置いて、お祝いの準備に取り掛かった。
 マネージャーの注意はあっさり無視された。

 パーティー会場はもちろん、一真の家だ。
 料理担当は衛で、一真がヘルパーする。和之が部屋の片付けをし、芳春と悠一は買出しに出かけた。
 奈月は何もすることがなく、部屋に座らされていた。
「あのさ……やっぱ何か手伝うって」
 奈月は立ち上がって、キッチンに顔を出した。
「ええから、奈月ちゃんは座っといて」
 しかし衛によって追い出されてしまい、結局元いた場所に座らされた。

「かんぱーい」
 グラスがカチッと音を立てる。奈月はもちろんジュースで、他の五人はもちろんお酒である。しかし衛は酒に弱いので、途中からジュースに切り替えていた。
(結局お兄ちゃんたちが飲みたいだけやんか)
 奈月は思わず毒づいた。
(ま、いっか)
 奈月は兄たちが楽しんでる様子を見て、そう思った。
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