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STAGE 5 誘拐? 5-2
三人は更衣室にしている教室に様子を見に戻ってきた。
「いないよ」
教室を覗いた沙耶華が二人に報告する。
「もう着替えてるってことだよな?」
「うん。多分ね」
晴樹の質問に沙耶華が頷いた。
「なぁ、あれって樹里ちゃんの鞄?」
教室を覗いた恭一が尋ねると、沙耶華と晴樹も教室を覗いた。
「あ、ホントだ」
教室に入り、沙耶華は鞄を手に取る。
「樹里のだ」
いつもの鞄に教科書やノートが詰め込まれている。念のためノートを取り出して名前を確認したが、確かに樹里の物だった。
「ってことは学校にはいるってことだよな?」
「そうだね」
晴樹の言葉に、恭一も頷く。
「念のためにもう一回かけてみるか」
晴樹はもう一度樹里の携帯電話を鳴らしてみた。すると樹里の鞄を持っていた沙耶華が反応する。
「あ」
沙耶華は鞄を漁り、振動している携帯電話を取り出した。
「樹里のだ」
沙耶華と同じ機種に、見覚えのあるストラップ。晴樹は溜息をつきながら、電話を切った。
「いつも制服のポケットに入れてるのに……」
沙耶華は首を傾げる。晴樹は何故かとっても胸がざわついた。
「すっげー嫌な予感する……」
晴樹が呟くと、沙耶華と恭一が顔を見合わせる。すると突然沙耶華が教室を見渡した。
「沙耶?」
突然の行動を不思議がった恭一が尋ねる。
「あった。これ、樹里の衣装だ」
たたんであった衣装を手に取る。確かにさっきまで着ていた衣装だ。
「これがここにあるってことはもう制服には着替えてるってことだよな」
恭一の問いかけに二人は無言で頷いた。
「探そう」
晴樹が叫ぶと、二人は驚いた。
「え?」
「鞄がここにあるってことは学校からは出てないはず。ってことは校内のどこかにいるってことだろ?」
晴樹の言葉に二人は納得した。
「俺、練習用教室見てくる」
恭一がまず思いついた場所を挙げる。
「あたしはトイレ」
「じゃあ、俺は樹里が行きそうなところ適当に探してみる」
三人はそう決めると、廊下に飛び出した。
晴樹は樹里がいそうなところを探すことにした。まず生徒会室。
「どした? ハル」
息を切らして入ってきた晴樹に拓実が話しかける。何だかとっても久しぶりに会った気がする。
「樹里、来てないよな?」
晴樹が確認すると、拓実は頷いた。
「ああ。……どうかしたのか?」
「いや……何でもない」
拓実に話そうかどうか迷ったが、確実ではないので黙っておくことにする。
「そうか」
拓実は気になるようだったが、また仕事に戻った。
「邪魔して悪かったな。じゃあな」
晴樹はそう言って生徒会室を後にした。
もう一度体育館も見に行ってみたが、他のクラスが準備をしているだけだった。
一応そのクラスの数人にも確認してみたが、誰も見ていないようだった。
しばらく探し回っていると、沙耶華からメールが届いた。急いで開く。
『女子トイレ前で樹里のハンカチを発見。さっきの教室に集合』
簡潔にそれだけ書かれていた。
ハンカチが、何故そんなところに落ちていたんだろう? もしかして……。
晴樹は考え込んでいた頭を上げ、教室に向かって全速力で走った。
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