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プロローグ
 地上界、つまり人間が住む地球では、一人溜息を吐いている少女がいた。
 彼女の名前は木元優子。高校二年生になったばかり。普通にどこでも居る女子高生だが、悩んでることがある。
『自分に生きている価値なんてあるのか?』
 視力が悪いため眼鏡をかけると、地味さが増す。
 そのせいで中学の時にイジメに遭い、それ以来、他の人とうまく話せない。
 うまく話せないのでいつも俯いている。だから友達と呼べる人が全くと言っていいほどいない。
 こんな負の連鎖の極みのような自分は、生きている価値なんてきっとない。
 ずっとそう思ってる。

 新学期が始まり、新しいクラスになったが、そこにも馴染めずにいた。
 断りきれない優子の性格を知ってか知らずか、副委員長を押し付けられ、他の役員の仕事すらも押し付けられたりしている。
 溜息を吐くのが日常になっていた。


 一方天界では、そんな優子の様子をじっと見守る天使がいた。
「ヨークッ。何しかめっ面してんだよ」
 仲間の天使、ダンが話しかけてくる。
「別に」
「・・・・・・。あの子のことか?」
 ダンに図星を突かれ、ヨクは黙り込んだ。
「気持ちは分かるけどさ」
「俺らは……ただ見てるだけしかできないのか・・・・・・?」
 ヨクの呟きにダンは何も言えなくなった。
「あの子は自分でも気づいていないような、良い所がたくさんあるのに・・・・・・」
「ヨク。そんな人間、今までもたくさんいたじゃないか。でもある時期が来ればきっと分かるときが来る。あの子だってきっと同じさ」
 ダンが言うことは分かる。でもほっとけない。
「お前、もしや地上に降りようとしてるのか?」
 ダンに言われ、動揺する。
「よく考えろ! 地上に勝手に降りることの大罪を分かってるのか?」
「分かってるよ。一度地上に降りたら、二度と戻れないことくらい・・・・・・」
 ヨクは呟くように答えた。
「分かってるなら、もう必要以上に考えるのを止めろ。いいな」
 ダンに強く言われ、ヨクはコクンと頷いた。

「あーあ。つまんねぇ」
 一人の悪魔が日本の上空で呟いた。
「この辺で面白いヤツいねぇのかなぁ」
 悪魔は地上を見渡しながら言った。
「お。あいつ暗い顔してんなぁ」
 楽しそうに笑いながら後を付ける。悪魔は彼女、優子の情報を手に入れながら、どう遊ぶかを考え始めた。
「そうだなぁ。やっぱ一番身近な人間を殺すか」
 悲しむ顔を想像し、楽しみで仕方がなかった。
「お、あいつだな。幼馴染君は」
 優子に話しかける男を見つけ、ニヤリと笑った。
 学校からの帰り道。確かあの工場の真横を通るはずだ。
「来た来た」
 悪魔は楽しそうにちょっと指を動かし、二人が丁度真横に来た時に合わせて、建物に立てかけてあった木材を倒した。

「優子、危ない!」
 悪魔の思惑通り、幼馴染の男、高村健太は優子を突き飛ばし、木材の下敷きになった。突き飛ばされた優子は無事だった。
「け、健太くん!」
 優子は必死で木材を退けようとするが、重くて持ち上がらない。そのうちに工場で働いていた従業員が出てきて、木材を退かしてくれた。
「・・・・・・健太くん・・・・・・」
 優子は泣きそうになりながら、健太の手を握った。すると力なく握り返して来る。
「ゆ・・・・・・こ、だ・・・・・・じょぶ・・・・・・?」
「あたしは怪我してないよ。大丈夫だよ」
「よ・・・・・・かた・・・・・・」
 そう言うと、握っていた手の力がなくなった。
「やだ、健太くん・・・・・・しっかりして!!」
 優子は思わず祈った。別に神様を信じてる訳でもないのに。だけど何かにすがりたくなった。
『神様、お願いします。健太くんを・・・・・・助けてください!』

 ヨクは事の一部始終を天界で見ていた。
「・・・・・・の・・・・・・やろ・・・・・・」
 許せない。ココで見守ることしかできない自分に腹が立つ。とっさの判断で、木材が倒れる瞬間、倒れる位置を少しずらしたから、健太はきっと無事だろう。
 でも、許せなかった。あの悪魔が面白半分で人の命を弄んでいることも、ココに居て見守ることしかできない自分も。

 守りたい。守ってあげたい。
 そしてあの子に教えてあげたい。
 もっと明るく生きる方法を。