font-size L M D S |
エピローグ
天界に戻ったヨクは相変わらず地上を見つめ、ボーッとしていた。「ヨク。仕事をしろ。」 ダンに怒られても気のない返事をする。 「・・ダン・・」 「ん?」 「本当にあれでよかったのかなぁ・・」 「何を今更」 ヨクの呟きに溜息で返す。 「だって・・本当に力になれたのか、分かんないし」 「あの子が変われたのは、お前の力だろ?」 「でも・・」 「ウジウジ考えるなんて、ヨクらしくないな」 そう言われ、ヨクは苦笑した。 「あの子、笑顔が増えたと思わないか?」 そう言われ、ヨクは頷いた。 「確かに・・笑顔は多くなったみたいだ。自殺しようとか考えなくなってみたいだし」 「それはヨクのおかげじゃないのか?」 ダンの言葉にヨクは何だか嬉しくなった。 もうあの頃の優子じゃない。それがヨクにとっての救いだった。 「お前、あの子に言ってたじゃないか。『もう一人でも歩いて行ける』って。お前が信じてやれなくて、誰が信じてやるんだ?」 「そう・・だよな・・」 ヨクはもう一度優子を見た。笑顔の優子に呟いた。 「がんばれ」 優子は数日間の記憶が曖昧だった。自分がこんなに変われたのも、よく分からない。 あの日舞っていた羽を何故か今も大切に持っている。何だか忘れちゃいけない物のような気がして・・。 辛い時、苦しい時、その羽を持っているだけで何故か落ち着いた。そして何でも乗り越えられそうな気がした。 それから数年後。優子は絵本作家として活躍するようになる。その話の中には必ずと言っていいほど天使が出てきていた。明るくて天真爛漫な天使が。 「優子。また天使のお話か?」 幼馴染から恋人へと昇格した健太が問う。 「うん。」 笑顔で優子は返事した。 「お前ホント天使好きだな」 「あたしね、居ると思うの。静かに見守ってくれてるんじゃないかなぁって」 「そっか」 健太は窓から見える青空を見上げた。 「案外居るかもしれないな・・」 |