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プロローグ
 此処は一体何処なんだろう?

 必死に起き上がろうとするが、体が言うことをきかない。目を凝らして状況を把握しようとしても、何も見えない。
 閉ざされた真っ暗な世界。何処を見てもただ闇が広がっている。

 此処は一体何処なんだ?

 暑くも寒くもない。特に痛みも感じない。体は動かないが、それが正常かのようにも思える。
 ただ相変わらず広がる闇に不安は募るばかりだった。

 此処は一体何処なんだ?

 何か悪い夢でも見ているのだろうか?夢だとしたら何て変な夢なんだ。こんな夢は初めてだ。

 此処は一体何処なんだ?

 もし夢なら早く醒めたい。夢でも現実でもいい。
 誰か光を・・・・・・。暗闇はもう嫌だ!


 どのくらいの時間が経ったのだろう?もう随分長い間このままだ。いや、そう感じるだけなのかもしれない。
 どちらにしても時間は相当経ってるはずだ。
 どうすればいい?身動きの取れない体でどうしようもないのだが、それでもどうにかしなきゃ。
 これはどういう状況なんだろう?それを把握するためにも光が欲しい。誰か光を・・・・・・。


 いつの間にか眠っていたらしい。という事はこれは現実なのだ。
 思い出せ。こうなる前に何が起きたかを思い出すんだ。そうすればこの状況がおのずと分かるはずだ。

 ・・・・・・ダメだ。どうしても思い出せない。何故だ。


 しばらくして少し暗闇が晴れた。光が何処からか射し込んでくる。待ち望んだ光が、徐々に辺りを照らし始める。
 目に入ってくるのは、赤い染み。至る所に赤い汚れが飛んでいる。
 何だ?
 だらんと体を投げ出した人形が無数にある。虚ろな目をした人形(ソレ)は顔や服に赤い染みをつけ、青白い顔をしている。
 見える範囲を見渡すと、人形たち(ソレら)は様々な形をしていた。何かに押し潰され、足しか見えないもの。まるで切断されたかのように腕だけが転がっているもの。虚ろな目でこちらを見ているもの。
 何だ?これは。
 回らない頭を必死に回転させる。そしてふと気づいた。あれは人形なんかじゃない。人間だ!さっきまで・・・・・・こうなる前まで生きていた人たちだ!
 その事実を受け止めた瞬間、背筋が凍った。
 あの無数に散った赤い染みは血だ!
「あ・・・・・・。あ・・・・・・」
 声に出そうとしても、声にならない。

 怖い!助けて!!誰か助けて!!誰か・・・・・・!