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プロローグ
それはまだ哲哉が地元にいた時。高校生の頃からの彼女である芹華は既に東京でモデルとして活躍していた。彼女は忙しく、滅多に実家に戻ってくることはなかった。忙しいのは分かっている。自分もいつか彼女に追いつきたいとずっと思ってた。哲哉は高校からやっているバンドを地元で地道にがんばっていた。彼女が地元に戻ってきたら、必ず行く場所があった。車を飛ばして向かう先。2人の秘密の場所。そこは街外れの山の上だった。 「やっぱココが一番見晴らしいいね。」 芹華はノビをしながら言った。 「やな。」 哲哉も車から降り、丘になっているところに芹華と腰掛けた。 「今日めっちゃ晴れてるねぇ。」 芹華は空を見上げた。それに釣られるように哲哉も顔を上げた。雲一つない空。今まで見たことないような真っ青な空が広がっている。 「ねぇ。」 不意に話しかけられ、哲哉は芹華を見た。芹華は空を見上げたままだった。 「うちら、こうやって会える時間少ないよね。」 「そら・・しゃーないやろ。」 「うん。割り切ってても寂しい。」 不意に口にした言葉が哲哉の心に響いた。 「俺も寂しいよ。」 「うち、この空、覚えてる。」 「え?」 突然話が切り替わったようで、哲哉は驚いた。 「うちら、離れてても、空でつながってるって思えるから。」 芹華はそう言って微笑んだ。少し泣きそうな瞳だったように思えた。 「だからどんなに離れてても、一緒だよ?」 芹華の言葉に、哲哉は頷いた。そして見上げた空を心に刻んだ。 |