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 幸仁が目を覚ますと、日はまだ完全に昇っていなかった。時計を見ると五時を指していた。もう少し寝れるが、何だか目が冴えて眠れない。何度か寝返りを打つが、結局幸仁は起き上がった。
 約束の時間までにはまだ時間はたっぷりある。幸仁は起き抜けにシャワーを浴びることにした。
 寝ぼけ眼だったのが、シャワーで段々と覚醒する。シャワーに打たれながら、頭の中で今日の予行演習をした。
 妙な緊張が走る。
 シャワーが終わり、浴室から出ると、洗面台の鏡が目に入った。緊張しきってる顔を両手でパシッと叩く。
「いてぇ・・・・・・」
 ちょっと強く叩きすぎた。だがおかげで気合が入った。
「よし!」
 体を拭いて、用意してあったシャツに袖を通す。
「着なれないな・・・・・・」
 ぼやきながら、この日のために新調したてのスーツを着る。
「似合わねぇ・・・・・・」
 鏡に映る自分を見て思わず口走る。
 時計に目をやると、まだ七時前だった。約束は九時。
「いっつも俺が遅れてくのにな・・・・・・」
 何だか笑いがこみ上げてくる。緊張しすぎなのだろうか?
 この間彼女に切ってもらったばかりの髪は少しタオルで拭くだけで、すぐに乾いた。鏡の前で気合を入れて髪をセットする。
『幸仁の髪、好きだよ』
 不意に彼女、真里華の声が聞こえた。
 同じ美容師の彼女と出会ってもう五年が経とうとしている。彼女と居る時間は、最高に楽しくて何だか嬉しくて、とても和んだ。
 鏡の前でニヤける自分に気づき、気持ち悪くなる。
「・・・・・・こんなもんか」
 セットし終わり、鏡から離れる。
 緊張を解すために、タバコを一本取り出し銜えた。だが、火を点けようとしてやっぱりやめる。
「はぁ・・・・・・」
 変に溜息が出る。少し寝不足のようだ。昨日はなかなか眠れなかった。しかも朝も早く目が覚めてしまった。
 ふとテーブルの上においてある小さな箱が目に入る。
 今日、この日のために真里華に捧げる言葉も練習した。そしてこの小さな箱を渡す。少しの不安が過ぎる。でもその分強く誓う。
「よし」
 気合を入れ、立ち上がる。コートを羽織り、ポケットに忘れずに小さな箱を入れる。
 少し早いが、家を出ることにした。

 待ち合わせの公園までの道のりは何だか遠くに感じる。その分、真里華との思い出が頭を駆け巡った。
 正直こんなに好きになるとは思っていなかった。最初は仕事仲間としか思っていなかったのだ。だが、仕事で落ち込んだときや辛かったとき、傍で支えてくれたのは彼女だった。いつの間にか真里華に惹かれていた。
『これから先、何があったとしてもきっと真里華と一緒なら乗り越えていける』
 いつしかそんな風に考えるようになっていた。よくドラマとか映画とかで描いているような恋とか愛とか、正直馬鹿にしてた部分がある。それなのに、今はその気持ちよく分かる。こんな気持ちになれたのは真里華のおかげだ。
 真っ直ぐ前を向いて歩く。
 真里華が待つ公園まであと少し。一歩一歩近づく度に、緊張が増す。
 一度立ち止まり、深呼吸をする。コートの右ポケットに手を突っ込み、箱を確認する。 目の前の公園には、もう真里華が居るようだった。
「よし」
 気合を入れ、高鳴る胸を抑えながら、再び一歩を踏み出す。
 誓いの言葉を胸に、いざ出陣。


inspired:シルビア/Janne Da Arc

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