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 最終列車のベルが構内に鳴り響く。
「じゃあ・・・・・・ここで」
 達也は一言だけそう言った。悠子は目を伏せたまま、頷いた。鞄を一つだけ持ち、列車に乗り込んだ達也は、ドアが閉まる間際、口を開いた。
「さよなら」
 その言葉にやっと悠子は顔を上げた。閉まってしまったドア越しに口を開く。
「さよなら」

 走り出してから、達也は席に座った。未練はまだある。だけどこのまま二人、一緒に居ればお互いのためにならないと分かっていた。
 ふと窓の外を見ると、星が夜空を彩っていた。
 達也は夜の闇の中、悠子と過ごした時間を思い出していた。

 性格は全く正反対だった。達也は能天気で、悠子は几帳面だった。だけど自分が持っていない性格に二人は魅かれあった。
 だが、いつからだろう? 能天気で典型的なダメ男な達也は、悠子に依存しすぎていた。それが悠子の負担になると、気づきながらも。
 分かっていた。このままじゃダメだって。自分も悠子もダメになるって分かっていた。だから二人で話し合った。話し合って、お互い違う道へ進もうと決めた。
 今でも胸が苦しい。本当に彼女を愛していたから。悠子が居てくれたからこそ、自分の夢に没頭できた。それだけじゃダメだと分かっていたが、没頭できたおかげで見つけたものもある。
 達也は旅立つことを決めた。

 だけどそれ以上に見失ったものもある。いつからこうなってしまったのか分からない。軋む胸を押さえる。
 遠ざかっていく彼女の住む街。少しずつ速度を上げる列車は、確実に今まで住んでいた街から遠ざかり、夜の帳へと突き進んでいく。
 お互いをただ傷つけるために二人は出会ってしまったんだろうか?
 達也は首を振った。
 出逢わなきゃ良かったなんて言いたくない。少なくとも達也自身はそう思う。
 遠ざかる街並を見つめ、涙を堪えながら、達也は呟いた。
「さよなら・・・・・・悠子。・・・・・・ありがとう」


inspired:最終列車/ムック

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