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 いつもより早く目が覚めた朝。もう一度寝ようと毛布を被るが、一度意識が覚醒してしまったので、眠れない。
 信也は二度寝を諦めて、起き上がった。ここはリビングのソファ。昨夜同棲している彼女と喧嘩して、彼女にベッドを取られたのだ。
 信也はノビをしながら窓辺にやってきてカーテンを開けた。曇っていて微妙な天気だ。何となく窓を少しだけ開けてみた。
「さむっ」
 冷たい風が寝起きの顔に直撃する。寒くなり信也はすぐに窓を閉めた。
 今年は暖冬だって聞いたのに、一向に暖かくならない。
「はーるよこい♪」
 何となくワンフレーズ歌ってみるが、彼女がまだ眠っていることに気づき、口を塞いだ。

 顔を洗うと、少しだけすっきりした。
 昨日の喧嘩の後からずっと考えていた。あんなことで喧嘩するなんて大人げなかったと。
 喧嘩の原因は家具だった。もうすぐ結婚予定の二人は決まったばかりの新居にどんな家具を入れるのかを相談していたのだが、好みが割れて思わず喧嘩になってしまった。
 よくよく考えるとそんなにムキにならなくてもよかったのだが、あの時は思わず喧嘩腰になってしまった。
 そしてお互い謝るタイミングを掴めないまま一夜を過ごしてしまったのだった。
「ハァ・・・・・・」
 思わず溜息が漏れる。
『溜息つくと、幸せが逃げてくんだよ』
 彼女の声が不意に浮かぶ。喧嘩をしているはずなのに、彼女のことを思い出すなんて。 信也は思わず笑った。

 ベッドでまだ寝息を立てている彼女は、幸せそうな顔で眠っていた。
 彼女がいつも隣で息をしていると言うことが、どれだけ幸せなことなのか再確認する。
「そうだ」
 信也は台所に行き、彼女が買ったコーヒーメーカーに豆と水をセットした。スイッチを入れて、自分は部屋に戻る。
 お気に入りの椅子に座り、パソコンにスイッチを入れる。しかし最近調子が悪いパソコンはすぐにフリーズしてしまった。
「ハァ・・・・・・。新しいパソコン欲しいなぁ・・・・・・」
 だけど今は何かとお金がかかる。諦めざるを得ない。
 再起動すると、何とかまともに動いてくれたので、信也はホッとした。

 数分後。コーヒーが入る。信也は自分のマグカップと彼女のマグカップにコーヒーを注いだ。
 その時、部屋で音がした。彼女が起きたのだろう。
「おはよ。起きてたの?」
「おはよ」
 信也は挨拶しながら、カップを持ち、彼女の元へ向かう。
「はい。コーヒー」
「ありがと」
 コーヒーを渡すと、彼女は驚いた顔をしたが、すぐに受け取る。
「昨日はごめん。言いすぎた」
 信也が謝ると、彼女は信也の目を見た。
「あたしこそごめん。意地になっちゃって」
 暖かい湯気が鼻先をくすぐる。冷たくなった手をコーヒーで暖めた。
「仲直り、な」
 信也が言うと、彼女は「うん」と笑った。

 少しだけ寒い朝。コーヒーを飲んで温まる。

 喧嘩した日の翌朝。僕らはいつもコーヒーで仲直り。


inspired: コーヒーの二つの役割〜two parts of coffee〜/SOPHIA

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